「おかしい、でも逃げるお金はない」不満が爆発か

中国語に「層層加码」(下に行けば行くほど厳しくなる)という言葉があるが、たとえイミグレの担当者であっても、強い権限を持っている。ゼロコロナでも、省よりも市、市よりもマンションの居民委員会の下っぱの係員のほうが市民に強い態度に出て、強制する権限を持っていることが指摘された。前述の富裕層も「空港のイミグレという“関所”を通過する際、胸がドキドキ、心臓がバクバクした。出発ゲートまでたどり着いても、本当に無事に自分は出国できるか不安で仕方がなかった」と話していた。

筆者撮影
上海浦東国際空港

このように、ごく一部の富裕層は運よく中国から出国し、ゼロコロナから解放されることができるが、大多数の中国人にとってそれは不可能だ。ただ黙って政府の言う通りにするしかないのだが、とくに若い大学生たちは海外との接点も多く、国内の情報統制を「おかしい」と思っているだけに、精神的に追い詰められている。ただひたすら我慢することにもう耐えられないと思っており、今後も、何かの事件や出来事を引き金に、抗議デモが再燃する可能性はまだ残っている。

ゼロコロナ政策の転換点となるのか

11月30日には江沢民元国家主席死去というビッグニュースも飛び込んできており、若者が「追悼」と称してデモをする可能性もある。政府の出方が注目されているが、同日、ロックダウンが続いていた広東省広州市の複数の地区で、突然規制が緩和され、封鎖が解除されるというニュースがあった。

前日の29日には、浙江省政府が「人民が第一であり、コロナ対策が第一ではない」と題する文書を発表、政府のゼロコロナを暗に批判して、市民の不満を和らげようとするような動きもあり、12月1日には孫春蘭副首相が「中国の防疫対策は新たな局面、新な任務を迎えた」と発言。ゼロコロナの転換を示唆しているのでは、と注目された。

今回の異例の抗議デモにより、今後、政府がどのような方向に舵を切るのかはまだ予測できないが、若者たちの抗議デモが、のちに振り返ったとき、ゼロコロナの大きな転換点となる可能性も出てきている。

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