党主導の経済運営が限界にきている
ここへきて、中国の債券を売却する海外投資家の増加に歯止めがかからない。国際金融協会(IIF)によると、9月には中国の債券市場から14億ドル(約2000億円)が流出した。それに加えて、本土の株式市場からも資金が海外に流出している。今のところ、中国からの資金流出に歯止めがかかる兆しは見られない。10月16日から始まった第20回共産党大会で、異例の3期続投が確実視されている習近平主席にとって大きな痛手だ。
背景として最も大きいと考えられるのは、潜在成長率の低下懸念の高まりだ。中国共産党政権の経済運営モデルの限界と言い換えてもよい。“改革開放”以降の中国は、党主導で市場メカニズムを部分的に導入しつつ、国有・国営企業の事業運営体制を強化した。
それによって1990年代の後半から2000年代にかけて中国は“世界の工場”としての地位を確立した。一時は中国がデフレを輸出しているといわれるほど、中国企業の輸出競争力は高まった。リーマンショック後、共産党政権は投資によって高成長を維持しようとしてきた。
しかし、不動産バブル崩壊などによって投資主導の経済運営は限界にきている。米ドル/人民元の推移を見る限り、インフラ投資積み増しなどによる共産党政権の景気対策は主要投資家の懸念を緩和するには至っていない。中国からの資金流出はさらに増加する恐れが高まっている。
リーマンショック後、輸出から投資にシフトしたが…
リーマンショック後、中国経済の成長の原動力は輸出から投資にシフトした。それに伴って、中国共産党政権は海外からの資金流入の促進に取り組んだ。その象徴的な施策が、2017年7月に開始された“ボンドコネクト”だ。
ボンドコネクトとは、海外の機関投資家が、香港の資金決済システムを利用して、中国本土の債券を売買する制度をいう。世界の主要投資家にとって、ボンドコネクトの開始は相対的に高い経済成長が期待される中国経済に、より効率的に資金を振り向けるために重要な役割を果たした。リーマンショック後の世界経済では、一時期、米国の連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを進めた局面はあった。それでも、過去に例をみない低金利環境が続いた。
その状況下、各国の機関投資家がより高い利得を手に入れるために、中国へのより自由なマネーフローが促進されたことはエポックメイキングな出来事だった。ボンドコネクトの開通後、中国の国債、社債、地方債などに投資する海外投資家は増加した。特に、わが国などで利用されている主要な国債などを対象とするインデックスに中国が組み入れられたことは、資金流入を勢いづかせる大きな要因になった。