米中対立が強まるなか、「経済安全保障」に注目が集まっている。韓国人作家のシンシアリーさんは「韓国では半導体やバッテリーをはじめ、あらゆる産業分野で中国に依存している。尹政権はこのチャイナリスクに一刻も早く対応したほうがいい」という――。

※本稿は、シンシアリー『尹錫悦大統領の仮面』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

集積回路上のPCマイクロチップに重ね合った中国国旗
写真=iStock.com/Sunshine Seeds
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韓国は中国抜きに「経済安保」はできない

端的に、韓国は中国抜きに「経済安保」ができるのか。個人的に、現状ではできないと思っています。韓国では未だ「経済」と「安保」をそれぞれ別のものとして考える人が多く、例えば米韓首脳会談で「安保」について半導体やバッテリー関連の話が出てくると、「それは経済なのに、なんで安保云々の話をするのか」と反感を示す人もいます。

これは中国に経済を依存し、米国に安保を依存するという、いわゆる「戦略的曖昧さ(どちら側なのかはっきりせず、両方から得をする)」に慣れているからです。

しかし、すでに世界のサプライ・チェーンは再編されつつあるし、特に半導体やバッテリーのように、韓国が世界市場でシェアを取っている分野においては、もはや経済と安保は一つになっています。

中国の工場と「分業」している半導体生産

この点、韓国は中国への依存が深すぎて、経済安保が語れる状態ではありません。「大きい」や「広い」ではなく「深い」と書いたのは、単に「売る、買う」を語るレベルを超えているからです。中国と韓国は、「分業」が固着しています。

韓国は経済安保の話が出ると、とりあえず半導体とバッテリーの話をしますが、調べてみると、サムスンなども含めて韓国半導体企業は、中国の工場である程度作ってから韓国に送って(これも韓国からすると「輸入」にカウントされます)、そこに相応の工程を加えて完成させるシステムになっています。

半導体生産においても、サムスン電子、SKハイニックスなど韓国企業は、ほとんどを中国の工場でウェハ加工段階まで生産し、それから韓国に輸入してその後の工程(ウェハ切断、包装)を行っています。これは、材料輸入だけでなく完成品輸出の面においても中国市場への依存度が高いという意味です。