中国や北朝鮮の脅威に対抗するため、日本と韓国が連携することはありえるのか。韓国人作家のシンシアリーさんは「韓国では『日本は朝鮮半島に関わるな』という世論が広まっている。こうした世論を抑えて、尹大統領が日本との軍事協力を強化する可能性は絶対にない」という――。

※本稿は、シンシアリー『尹錫悦大統領の仮面』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

日本と韓国の国旗
写真=iStock.com/MicroStockHub
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日本の防衛力増強は「韓国にとって悪夢」

以前から、韓国は「米国が日本の防衛力増強を容認する」動きを、強く警戒してきました。つい最近の、まだ尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が就任する前のものですが、中道とされる韓国日報(4月27日)にも、こんな記事がありました。

〈……日本の普通国家化は、私たちにとっては悪夢だ。しかし、米国は気にしない可能性が大きい。すでに三回も米国は韓国を切り捨てるような決定をしたことがある(※長いので略しますが、1905年、桂・タフト協定、1943年、ヤルタ会談、1950年、アチソンラインの範囲設定のことです)

……今も、私たちは入れないでいるクアッド(QUAD)が、第2のアチソンラインになるのではないかとの懸念がある。米第7艦隊航空母艦が最近、日本海上で自衛隊駆逐艦と4年半ぶりに連合訓練を行ったのも、すっきりしない。次は私たちの国で日米軍事共助がなされる可能性も排除できないのだ……〉

「ウクライナ侵攻で得をしたのは日本」

アチソンラインとは、ご存じ、米国の防衛ライン設定で、当時の李承晩(イ・スンマン)大統領と米国の外交・安保政策のズレにより、韓国がこのラインから外れたことが、朝鮮戦争(1950年)が始まった一因だと言われています。

そして、日米首脳会談のあとから、同じ内容の記事が急に増えました。つい最近にも、中央日報(6月17日)が、ウクライナ侵攻が日本の防衛力増強のきっかけになったとして、ロシアが戦犯国である日本にだけ得をさせてしまった、これは大きな問題だ、とする趣旨の記事を載せたりもしました。読んでみて、「いや、問題視するの、そこかよ」と思ったりしました。

責められるべきは、ロシアがウクライナを侵攻し、戦争とも呼べないほどの殺戮を繰り返していることでしょう。少なくとも自由民主主義陣営が求めているのは、日本の役割拡大であると、またもや韓国と世界の『ズレ』が明らかになったわけです。