なぜ海外投資家の“中国離れ“が進んでいるのか
しかし、2022年2月以降、海外投資家は中国の債券を売却している。最大の原因は、景気後退の懸念が高まり、デフォルトリスクが急速に上昇していることだ。まず、2020年8月、“3つのレッドライン”と呼ばれる不動産デベロッパー向け融資規制が導入されたことは大きい。中国経済の高成長を支えた不動産市況の悪化は鮮明化している。
さらに、ゼロコロナ政策による動線寸断が経済活動を停滞させた。最悪期は脱したが、個人消費の回復ペースは緩慢だ。業種別にみると、非製造業の景況感悪化が鮮明になっている。2021年9月に開園したユニバーサル・スタジオ・北京では、8月末までの間に従業員数が25%程度削減されたと報じられている。生産活動、不動産や固定資産の回復ペースも鈍い。
これまでの景気刺激策が通用しなくなっている
見方を変えて考えると、共産党政権主導で実現されてきた中国の高成長は限界を迎えた。過去、景気減速懸念が高まると共産党政権は、規制の緩和やインフラ投資など景気刺激策を強化した。それに支えられ、中国の景気は緩やかに回復した。年初来、共産党政権は、金融・財政政策を総動員して景気刺激策を強化している。しかし、足許の中国では景気が持ち直す兆しが見られない。
1978年に中国共産党政権は“改革開放”を開始した。深圳などに経済特区を設け、海外から国有・国営企業などへの技術移転は加速した。アパレルや日用品などの軽工業が徐々に成長し、鉄鋼や石油化学などの重工業化も進んだ。共産党政権は株式市場の育成を進め、IT関連の分野では民間企業の設立が認められた。天安門事件の後は米国による経済制裁や社会心理の悪化によって一時的に経済成長率が停滞した。