検閲をかいくぐり、同時多発的にデモが発生
中国で11月26~27日の週末、大学生など若者を中心に、ゼロコロナを継続する習近平政権への抗議デモが繰り広げられ、大量の警官が配備されるなど緊張感が走った。中国で真正面から政権批判が行われることは異例のことだからだ。
きっかけとなったのは11月24日にウルムチ市で発生した火災。ロックダウン中で救出活動が遅れ、何の罪もない幼い子どもなど10人が死亡した一件が報道され、3年に及ぶ厳しい行動規制やPCR検査の連続に堪忍袋の緒が切れ、ついに怒りが爆発したのだ。
とくに大学生はこの3年間、大学のキャンパス内に閉じ込められることが多く、外出の機会を極端に制限されていた。11月下旬にはキャンパスのグラウンドで突然、集団で「四つんばい」を行うなど、精神的に追い詰められている様子も報道された。しかし、彼らは離れている友人ともSNSで常につながっており、その情報量は日本人が想像するよりもずっと多く、スピードも速い。
検閲に引っかかりにくい独自のワードや、検閲しにくい連続画像などを使って情報を拡散する。ロックダウンされた地域が増えた時期が重なったこともあり、北京や上海だけでなく、西安、武漢、広州など遠距離の友人と同時多発的にデモを行うことができた。
W杯の「ノーマスク観戦」の様子は映らない
さらに、最近の若者の特徴は、海外に住む中国人の友人や親戚などともSNSでつながっており、世界的なネットワークを持っていることだ。都市部の進学校ならば、クラスメートの3分の1は海外の大学に進学することもザラにあり、海外に同級生がいることは、エリート層の若者ならば普通。そのネットワークを駆使することで、海外で発生している事柄やニュースも瞬時にキャッチしている。
現在開催中のサッカーワールドカップ・カタール大会で、観客がノーマスクで大騒ぎしている様子は、中国国内では画面が差し替えられており、通常放送では見られないが、少なくとも若者は、それが情報統制によるものだと知っており、直接、海外のサーバー経由でネットに接続できるVPN(仮想プライベートネットワーク)を使用し、海外の情報にアクセスしている。
むろん、新型コロナについても、海外ではすでに病気の扱いが変化していることも理解している。このように、中国の情報統制をかいくぐり、海外の情報にアクセスできるのは、人口14億人の中国で1億~2億人程度といわれているが、その多くが10代後半~30代までの若者世代だ。
彼らは、海外の報道と比べて、自分たちの国のトップがいかに非科学的な論理で政策を決定しており、それを全国民に押し付けているかということも十分承知していた。しかし、それでも、これまで我慢を重ねてきた。