「潤」の検索ワードが中国各地で急上昇
デモが行われた都市のひとつ、北京市では、デモを行う若者の近くを走る自動車が多数のクラクションを鳴らして「無言の応援」をしたという出来事があった。一般市民の多くは職を失ったり、逮捕されたりする可能性がある抗議デモを行う勇気はないが、彼らも、若者と同じように、すでに我慢の限界を迎えているということが感じとれた。
実はこの春ごろから、ゼロコロナに嫌気がさした富裕層の間で、中国から脱出する動きが急速に活発化している。具体的には3月28日から4月3日までの1週間、ちょうど上海市東部が最初にロックダウンされた期間に、「潤(ルン)=移民する」という言葉を検索する人が急上昇した。
中国では単語だけでなくセンテンスでも検索する人がいるが、最も多かったのは「カナダに移民する条件」で、検索数はその前の週と比べて2846%と大幅増。ほかに、「出国するならどこがいいか」「シンガポール投資移民の条件は何か」などのセンテンスでも大量に検索された。
検索者が住む都市の第1位は上海市で、2位が天津市、3位が広東省だった。ちなみに、「潤」がなぜ「移民する」という意味かというと、「潤」(ルン)の意味は本来「湿っている」「光沢がある」などだが、中国語の発音はrun(ルン)で、これが英語のrun(ラン=走る)と同じであるため、中国で「潤」は「移民する、逃げる、ずらかる」などの意味として使われている。
ロックダウン中の上海から日本に移住
さらに、爆発的に検索が増えたのが上海市東部のロックダウン終了日の予定だった4月3日だった。東部に続いて西部では4日間のロックダウンが予定されていたが、4月3日はそれが無期限に延長される可能性があるという絶望的な報道があった日であり、この1日だけの「潤」の検索数は5000万回を超えた。
これほどまでに移民に対する関心が高まったことはかつてなかったが、それでも、実際に出国を実現できた人は決して多くない。仕事、言語、家族の問題、そして何より資金の問題が大きく、中国から出たくても条件が整わないからだ。だが、私の知人の中で1人だけ、上海のロックダウンが実施されている最中の5月、中国を脱出し、日本に引っ越すことに成功した人がいる。
その人の経歴など詳細を書くことはできないが、20代の富裕層だ。以前も日本に何度か遊びに来た経験があり、2020年の初頭、東京都内の新築のタワーマンションを約7000万円で購入していた。