抗議行動の余波で遠のいた台湾有事

その一方で、台湾有事の可能性は遠のいたと断言していい。11月上旬、アメリカでは「年内にも中国が台湾に侵攻する可能性がある」との臆測が流れたが、もともと2022年中の侵攻などありえない。

習近平からすれば、台湾への侵攻は負けられない戦いになる。泥沼化しているロシアとウクライナとの戦争をつぶさに分析しながら、陸海空の軍事力だけでなくサイバー戦や宇宙戦など全ての領域で、台湾とそれを支援する国々(アメリカ、日本、オーストラリア、韓国など)に勝てると判断するまで動くことはない。

しかも、来る2023年は国際社会の政治が大きく動く助走となる年だ。先の統一地方選挙で蔡英文総統が率いる民進党が国民党に敗れた台湾では、2024年1月に焦点の総統選挙が予定されている。アメリカでは、2024年11月の大統領選挙に向けてさまざまな候補が名乗りを上げる年になり、日本や韓国では、それぞれ支持率が低空飛行の岸田首相と尹大統領の真価が問われる年になる。

習近平にとっては、親中派の国民党が勝利した台湾にさまざまな仕掛けをしつつも、台湾を含めた関係各国の動向を見ながら準備を進める1年になるはずだ。

「内憂」を片付けてから「台湾統一」へ

ただ、その前に、自身の足元が揺らがないよう、「ゼロコロナ政策」への抗議行動だけは沈静化させなければならない。それと併せてコロナ感染者を減らす、経済を上向かせるといった政策も進める必要がある。

ただ、新たに決まった最高指導部の面々は、正式には、2023年3月の全人代(中国の国会)で選出されるため、そこまでは思い切った対策が打ちにくい。そこが悩みの種だ。

このように、習近平が直面しているファクトを見れば、とても台湾統一どころではない。

アメリカのトランプ前大統領風に言えば、まずは「China First」(国内優先)だ。それが片づいてから、「Make China Great Again」(中華民族の偉大なる復興=台湾統一)へと動くと考えていい。

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