習近平は目玉政策の失敗にどう対処するか

筆者は、抗議行動が中国全域へと広がる中、習近平指導部の対処法としては、次の2つがあると考え注目してきた。

1つは、強権を発揮して警戒態勢とSNSなどの検閲を強化する方法だ。何しろ、最高指導部のメンバー(政治局常務委員)6人とその下部組織の政治局員24人を側近とイエスマンで固めた習近平である。「これをやる」と言えば、諫言できる人物などいない。

もう1つは、これまでの「ゼロコロナ」政策の効果を、科学的根拠をでっち上げてでも公表したうえで、少しだけ規制を緩め、国民の不満の「ガス抜き」を図る方法である。

事実、コロナ対策を担当する孫春蘭副首相は、専門家を集めた会合で、「ゼロコロナ」政策の緩和を示唆し、広州などでは規制が緩和された。ただ、中国では、このところ新型コロナウイルスの新規感染者が4万人前後で推移し、すぐに方針転換は難しい状況だ。

「突然の感染拡大を受け、われわれはダイナミックなゼロコロナ政策を順守し、新型コロナウイルスの予防と制御、経済と社会の発展という面で大きな成果を達成した」

これは、10月16日、中国共産党大会の冒頭、習近平が活動報告として「ゼロコロナ」政策を自画自賛した部分である。抗議行動が広がった程度で方針転換すれば、神格化されてきた習近平の威信は地に堕ちる。

何より、習近平自身が実績として強調してきた目玉政策の失敗を印象づけることになりかねない。

抗議行動からわずか3日で封じ込めへ

そこで選択したのが1つ目の警戒態勢と検閲の強化、つまり徹底した封じ込めである。

11月29日、国営新華社通信が、中国共産党中央政法委員会(警察・司法を統括する委員会)トップの陳文清書記が「敵対勢力の取り締まりを指示した」と報じたとき、「やはりそうきたか……」との思いを禁じ得なかった。

筆者の知人で上海のテレビディレクターによれば、デモが起きた翌日には、ネットで検索しても、デモや抗議行動に関する動画や写真が全くヒットしなくなったという。

当然ながら国営メディアは抗議行動について一切伝えておらず、中国版SNS、ウェイボー(微博)などでは、「白紙運動」といった言葉はもとより、「上海」という都市名ですら検閲の対象となっているという。

それでも抗議行動に参加したい市民は、VPN(Virtual Private Network)を使って情報を発信したり収集したりしているが、警察当局は、まずデモが行われた場所にバリケードを築いて人の出入りを遮断した。

そして、街中や電車内で無作為に市民に声をかけ、スマートフォンの中にある外国のSNSのアプリを削除させたり、「デモの当日は何をしていたのか?」「どこからその情報を得たのか?」などと聴取したりして統制を強めている。

香港中文大学で教鞭を執る小出雅生氏は、香港ではFacebookやLINEなどは普通に使用でき、中国当局も投稿内容を削除できないが、SNSでのやりとりを解読することはあり得ると語る。