クリエイティブな人間だけが組織を成長させるのではない

二人はその日のうちに他の何人かのエンジニアにも聞いてみたが、答えはほとんど同じだったという。そこで結局、グーグルは翌年になって管理職をもとに戻したのだった。人間はだれもが創造性を高めて、すばらしくクリエイティブな仕事をできるわけではない。優秀な人もいれば、仕事ができない人もいる。やる気のある人もいれば、意欲などかけらもない人もいる。しかしだからといって後者のような人たちを放置してもいいわけではないし、そのような人たちも仲間としていっしょに仕事をしていく必要がある。

佐々木俊尚『Web3とメタバースは人間を自由にするか』(KADOKAWA)

そもそも「多様性」というのは、いま現在は「できなさそうな人」「無能な人」に見えてしまう人でも、どこかで何らかの役割を発揮して、ひょっとしたら社会を救うかもしれないという可能性を考え、あらゆる多様な人を包摂しておこうというものである。

ビジネスジャングルで生き抜ける人、クリエイティブな人だけを重用し、その人たちだけが能力を発揮できるようにするというのは、社会にとっては健全ではない。そのバランスを調整するのが企業においては管理職の仕事であり、社会においては政治なのである。

ウェブ3の「自由」の問題は、ここにある。

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