GAFAMと呼ばれる巨大IT企業のサービスを使い続けると、人々の生活はどう変わるのか。ジャーナリストの佐々木俊尚さんは「サービスの多くは無料で確かに便利だが、人類をエリートと貧民に二分する危険性をはらんでいる」という――。

※本稿は、佐々木俊尚『Web3とメタバースは人間を自由にするか』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

ベッドに横たわり、夜にスマートフォンを使用する女性
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巨大企業はわたしたちの自由を奪っているのか

インターネットのテクノロジーには、ひとつの難しい問題が浮上している。

それは、フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)やアマゾン、グーグルなど「ビッグテック」と呼ばれる超大手ネット企業をめぐるものだ。

最初にすっぱりと言ってしまえば、「ビッグテックの支配はわたしたちの自由を奪っているのだろうか?」「それは幸福なのだろうか、それとも隷従の不幸なのだろうか?」という問題である。

インターネットのテクノロジーの進化で、わたしたちの暮らしは信じられないほどに便利になった。スマートフォンが登場したのは二〇〇〇年代の終わりごろで、まだ十五年ほどの歴史しかない。それなのにこの間のテクノロジーによる生活のアップデートはすさまじかった。

スマホが存在せず、地図アプリもメッセンジャーもツイッターも使えず、ウーバーイーツで晩ごはんも頼めない世界にあなたは戻れるだろうか? スポティファイもネットフリックスもなく、お店まで足を運んで何千円も使って、音楽CDや映画のDVDを買いにいかなければならない世界に戻れるだろうか?

AIに仕事を奪われたら、政府が出す生活費に頼ればいい?

テクノロジーはさらに進化しようとしている。あと十年もすれば完全な自動運転車が普通に走るようになっているだろうし、遠くにいる友人とまるですぐ近くでいっしょに過ごすようにメタバースを楽しむようになっているだろう。

しかもこれらのサービスの多くは、無料か比較的安価である。一枚の音楽アルバムの値段が三千円もした昭和時代の人に、「三十年後の未来には、何千万もの楽曲が月千円ほどでいくらでも聴けるようになる」というスポティファイのサービスを説明しても、だれも信じないに違いない。

ビッグテックは、人類史上初めてと言ってもいいほどの「安楽な暮らし」を実現しつつある。「いやいや、AIに仕事を奪われるじゃないか」「そもそも安楽な暮らしのための生活費が足りないだろう」という声もたくさん聞こえてきそうだが、そういう問題さえAIは解決してしまうかもしれない。これはあとあとくわしく説明するけれども、ベーシックインカムという解決策も提案され、さかんな議論になっている。

ここではその提案内容をかんたんに記しておこう。AIとロボットに仕事を奪われたら、政府がかわりに国民に毎月の生活費(ベーシックインカム)を支給する。国民はそのお金で企業から商品やサービスを買う。企業はそれで売上が立って利益も出るので、法人税を政府に支払う。政府はその法人税を財源にして、ベーシックインカムを支給する。

構図にするとこうだ。