1980年なかば以降、大学進学率は女子が男子を上回り、2004年以降、学位取得者も女子の割合が男子よりも多くなった。にもかかわらず、職業をもつ女性のうちフルタイム労働者はわずか60%程度しかいない。
謎と矛盾に満ちた事実に違いないが、私たちがさして驚かないのは、パートタイムで働く高学歴女性が知り合いにいたり、そのような選択が満ち足りた生活を送る上で理に適っているのを実感していたりするからだろう。
男女平等を選択したからといって、個人も社会全体も、全てうまくいくとは限らない。
女性が育児をしながら働かざるを得ない現実
ノルウェーが男女平等に成功した国と謳われているのは、女性がバリバリ働きながら、子どもをたくさん産んでいるからだ。一方で、ノルウェーは、時短勤務で働く女性の割合がヨーロッパで最も高く、16歳以下の子どもを持つノルウェー人男性は、かつてないほどよく働いている。
ノルウェーの女性の中には、やむを得ず保育や介護の職に就いている人もいる。彼女たちが望み通りの安定したフルタイムの職に就けるようにと、労働組合が闘っている。そもそも介護職や公務員の求人に応募が殺到するのは、時短勤務がしやすいからだ。
ノルウェーには、いまだ女性のリーダーは少なく、大半の女性が中間管理職に留まっている。
時短労働の女性が多いこと、またトップの地位に就く女性が少ないという事実に、労働生活での男女格差が現れている。
男性は依然として妻よりたくさん働き、高い賃金を稼いでいる。
男性は子どもや配偶者と過ごす時間は少ないし、家事と育児はあまりしない。
行政が継続的に改善策を講じているにもかかわらず、女性は以前にも増して、家事や育児を多く担い、家族との時間を確保できてはいるものの、賃金や社会保障や将来の年金額は目減りしてしまっている。
労働市場における男女格差は消えていない
政府により任命された男女平等委員は、2012年9月、労働市場における男女間格差は、父親の育児休暇期間の延長や保育施設の増設が進んでもなお、縮まっていないと報告した。同委員会を主導したヘーゲ・シェイーエ教授は、今なお残る男女格差に愕然としたという。
現代のノルウェーで、女性の賃金は男性の賃金のおよそ66%だ。ノルウェー中央統計局によると、母親が家事に費やす時間は、1971年から激減しているにも拘わらず、父親よりもはるかに多くの時間を家事と育児の両方に割いている。時短で働く男性はいまだ珍しい。
年金の受給額は職業期間と賃金から算出されるが、現在の女性の老齢年金の平均支給額は、男性よりも低い。女性の年金受給者のうち約半数が最低水準の金額を受け取っている。一方、男性で最低額しかもらっていない人は10人に1人のみ。言い方を変えるなら、最低額受給者の10人中9人は女性である。家庭での無賃労働に献身する女性にも、社会保障を全額支給するべきだ。
社会保障費が、賃労働で稼いだ額をもとに算出されるのは公平と言えないのではないか? 「与えよ、さらば与えられん」と言うが、与えるという言葉には家庭でのケアや労働は含まれないのである。