家庭内の家事の担い手は依然として女性

この2世代で、男女ともにライフスタイルが大きく変化した。とはいえ、変化の度合いはおそらく女性の方が大きい。

世の矛盾の大半は、生活様式の変化に起因する。女性が働いていたとしても、パートタイム勤務である場合が多い。収入は男性に及ばない。

現代の男性は歴史上、最も家事をしているが、それでも家庭内での主な家事の担い手は依然、女性である。

私たちは性別を判断材料に、役割を選ぶ。

女性の方が男性より頻繁に病気で欠勤する。新聞で仕事と家庭を両立する難しさについて書くのが、大方、女性なのは偶然ではないだろう。家族に子どもが加わった際、子育ての優先度の高さは男性と女性でしばしば異なる。ここで男女平等の真価が試される。

2005年のスウェーデンの調査で、家庭、仕事への貢献度に男女差があることが明らかになった。幼い子を持つ親は、様々な業界で働いているが、母親の40%は、子どもが小さいうちは労働時間を抑えたいと望んでいた。一方、男性で同じことを望む人はわずか15%だった。

「今の私の職場では、仕事と家庭の両立は無理」

仕事と家庭がどちらも順調な家族がいたとしても、余裕などほとんどないし、ほんのわずかに余裕があったとしても、ふとしたはずみで、失われてしまう。

子どもの保育所生活に急にトラブルが発生するかもしれないし、上司から高過ぎる要求を突き付けられるかもしれない。

仕事中にストレスを感じている様子の女性
写真=iStock.com/Jay Yuno
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ある30歳のエンジニアの女性は、自らの人生を次のように語った。

「私たちは完全に平等だと刷り込まれ、低賃金労働や退屈な単純労働に就かないよう口をすっぱくして言われてきました。

大学で著しく優秀な成績を収めれば、追加の単位が与えられ、NTH(ノルウェー技術大学、現NTNUノルウェー科学技術大学)がいかに素晴らしいか無料で見て回るツアーに参加できます。

ところが卒業後は、考え方や価値観が合わない労働市場に出て行かなくてはならないと、あらかじめ教えてくれる人はいませんでした。

私たちはキャリアというメリーゴーランドや、仕事と家庭の両立という大海原に、強制的に投げ出されます。ほかの選択をしていれば、仕事以外で自己実現できたかもしれないのに。前へ倣えするみたいに世間と同じであるために私は今、毎日遅くまでPCの前に座っています。

私には分からないんです。子どもを持つ女性が、どうしてやっていけているのか。少なくとも今の私の職場では、仕事と家庭の両立は無理なんです」

男女平等が足りないことを示すデータ

女性は仕事と家庭の大半をいまだ担い続ける一方で、家の外で働くよう強く期待されている。

ノルウェーは男女平等である、という暗示に私たちはかかってしまってはいないか?

ノルウェーは男女平等というより、「やや男女平等」と言った方が正しいのではないか?

ノルウェーの女性の社会進出率は高いが、主な稼ぎ手は相変わらず男性で、女性の労働者の大半がパートタイム勤務もしくは低賃金労働をしている。

2010年にノルウェーの統計局が作成したパンフレット『カーリとオーラ』に、男女平等を示す――いや、むしろ、男女平等が足りないことを示す――数字が見られる。

これによると、女性の労働力人口の70%近くが賃労働をしている。