日本の少子化の一因は、子育ての経済的負担が大きいからだといわれる。海外とはどれだけ違うのか。ジャーナリストの池上彰さんと増田ユリヤさんが、翻訳家のマライ・メントラインさんとドイツとの違いについて語り合った。3人の共著『本音で対論! いまどきの「ドイツ」と「日本」』(PHP研究所)より一部を紹介する――。
2人の子どもに家で本を読み聞かせる母
写真=iStock.com/alvarez
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「お客さん」のつもりがドイツに住み着いた外国人労働者

【池上】ドイツは日本と同じく少子高齢化問題に直面しています。その労働力不足を移民の力で乗り切ろうと一時期、力を入れていました。

マライ・メントライン、池上彰、増田ユリヤ『本音で対論! いまどきの「ドイツ」と「日本」』(PHP研究所)
マライ・メントライン、池上彰、増田ユリヤ『本音で対論! いまどきの「ドイツ」と「日本」』(PHP研究所)

【マライ】移民労働者、「ガストアルバイター(Gastarbeiter)」の話ですね。「ガスト(Gast)」、つまり「ゲスト」「お客さん」と呼んだくらいですから、ドイツに来て一定期間働いていただいて、将来的には自国に帰ってもらうはずだった外国人労働者のことです。

【池上】そのはずだったけど、実際には帰ってもらえなかったという……。

【マライ】政府の見込み違いでした。でも、そりゃ住み着きますよね。仕事があって、治安も教育もいい。特に子どもがいたら、そのまま家族で住み着きますよ。

【池上】最初はトルコ系でしたよね。

【マライ】50年代後半くらいから、積極的に受け入れてきました。

トルコとイタリア、ギリシャなどですね。その結果、たしかにドイツの経済は成長したけれど、そのツケが数十年後にやってきました。「いずれ母国に帰るんだから」と、ドイツ語教育などに本腰を入れないまま二世、三世が生まれていった。先ほど教育問題の話で述べたように、ドイツにいながらドイツ語が喋れない人々が大勢生まれたんです。

外国出身の労働者たちは、その地域で独自のコミュニティを形成します。ドイツ語ができなくても日常会話さえできれば、コミュニティ内の母国語でなんとか生活できてしまうんですね。

子どもたちは地元の幼稚園にも行かず、お母さんと一緒に家で生活し、小学校入学という段階になって初めて、ほとんどドイツ語が話せないという状況に直面する。