※本稿は、河合雅司『世界100年カレンダー 少子高齢化する地球でこれから起きること』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
全世界の合計特殊出生率は下がっている
スピードは緩やかであるにせよ、多くの国・地域で人口減少が進み始めた背景には、合計特殊出生率の長期低迷がある。地球規模で女性が子どもを産まなくなる傾向にあり、少子化がすでに急速に進行しているということだ。
背景には技術の進歩による経済発展がある。暮らしが豊かになるにつれて、多くの人々が教育を受けられるようになり、公衆衛生も普及してくると社会は「多産」から「少産」へと向かう。「少産」に転じる要素の1つは、子どもの死亡率の改善だ。
国連の資料によれば、5歳未満児の死亡率は国によってバラつきはあるが、「1990〜1995年」には出生数1000人当たり91人だったが、「2015〜2020年」は40人にまで低下した。
すでに開発途上国の多くで経済的な発展が成し遂げられたため、全世界の合計特殊出生率は「1985〜1990年」は3.44だったが、「2015〜2020年」には2.47へと低下したのだ。
1950年以降の合計特殊出生率の推移を見ると、ほとんどのエリアで著しく下落している。「2015〜2020年」では4.72と最も合計特殊出生率が高水準にある「サハラ砂漠以南のアフリカ」は、「1950〜1955年」には6.51であった。「北アフリカ・西アジア」は現状2.93だが、「1950〜1955年」には6.57であった。
「最後の人口爆発の地」アフリカですら少子化が急速に進む
世界の合計特殊出生率が今後どうなっていくかと言えば、国連の中位推計では「2045〜2050年」は2.21と置換水準を上回るものの、「2070〜2075年」になると2.05となり、「2085〜2090年」には1.98と「2」台を割り込む。その後も下げ止まらず、「2095〜2100年」には1.94となる。多くの国・地域で社会が豊かになっていくことの裏返しであるが、世界人口の減少は止まらなくなる。
21世紀前半の人口増加の“立役者”となる「サハラ砂漠以南のアフリカ」の合計特殊出生率は、「2015〜2020年」の4.72から「2045〜2050年」には3.17となる。
「2065〜2070年」はさらに下がって2.62となり、「2085〜2090年」は2.28とほぼ半減する。そして「2095〜2100年」には2.16になる。「サハラ砂漠以南のアフリカ」は置換水準を下回るわけではないが、21世紀後半は世界人口を押し上げる力を急速に失っていくということだ。ちなみに、米国ワシントン大学の研究所チームは、2063年に「サハラ砂漠以南のアフリカ」も、2.09となって置換水準を下回ると予測している。2100年は1.73だ。このように、最後の「人口爆発」が起こるアフリカでも少子化が急速に進んでいくので、世界人口は減少に転じていくことになる。