ドイツでは「ホームレスになる必要がない」
【マライ】変な表現ですけど、ドイツでは「ホームレスになる必要がない」んです。つまり、路上生活や、ファイナルステージとしての「生活保護」の手前に、いろんな階層で救済措置があるから。ましてや貧困を子どもの人生にまで及ばせたくないという、社会全体での合意ができているんです。もちろん、それでも路上生活している人はそれなりにいますが。
【池上】日本でも、生活保護になる前の救済措置が2015年にできました。「生活困窮者自立支援制度」です。働く意思がある人を対象に、一時的に支援して自立を促すための制度ですね。生活に困っていて生活保護に助けを求めることになりそうな人や、生活保護から抜け出したい人などが利用できるように、というものです。相談窓口は、市区町村に設置された福祉事務所になりますが、意外に知られてないですね。
高い税金を払った人は対価を得る「権利」がある
【マライ】こういった社会保障について話すとき、私のようなドイツ人が常に意識してしまうのは、やはり「義務」と「権利」の関係性です。ドイツでは高い税金を払う「義務」もしっかり発生しますが、同時に、いざとなったら様々な手当てを受給できる「権利」もあると考えます。だから、そのあたりをしっかり調べた上でもらえる手当をしっかりもらっている人に対しては、ちゃんと評価するようなところがあります。「権利に関する義務をちゃんと履行した」みたいな、というとアレですけど(笑)。
【池上】どうも、日本の場合は両極端なケースが目立つ気がします。
お金は個人で何とかするもの、という考え方が根強いので、社会保障のシステムを理解できていなかったり、教育費は個人負担が当然だったり。「4つのポケット」なんていう言われ方もしますが、両親なり祖父母なりが少なくなった子や孫にお金をつぎ込むみたいな状況が生まれていますよね。
やっぱり日本の場合、「社会が子育てをする」という観点の弱さが、いろいろな問題の根底にある気がしますね……。