※本稿は、松田小牧『防大女子 究極の男性組織に飛び込んだ女性たち』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。
「女子は生理が止まって普通だから」と語る指導教官
防衛大学校の生活を紹介するうえで、女子特有の悩みにも触れておかねばならない。生理についてだ。
生理痛は個人差がひどいため、「イライラしてしまうサイクルがあるのが嫌」「生理中の訓練が本当に苦しかった」と挙げる者がいる。ある者は、生理痛が重いため、過酷な行軍時に被らないようにとピルを服用し、副作用に耐えていたのに行軍時に生理が来てしまって泣いたという。
1学年時の夏の訓練では、東京湾8キロ遠泳がメインとなり、毎日海やプールでの練習が実施される。高校時代までは、「今日あの日だから見学で」が通用するが、私の知る限り、防大では「生理だから」と言って練習を休んだ女子学生はいない。
訓練期間は約1カ月あるため、大体一度は生理期間が重なる。みんな慣れないタンポンを装着して訓練に挑むことになるが、そもそもタンポンを使ったこともない者がほとんどのため、トイレで悪戦苦闘し、時間にも追われて軽いパニックになることもある。
ある者は「遠泳本番と生理2日目が重なった。なんとか乗り越えたけど、『こんなキツいことがほかにあるのか』と思った」と振り返る。話を聞く限り、女子学生の生理への扱いは、昔の方がキツかったようだ。
40期(女子1期)代は、「あまり問題視、重要視されなかった」と振り返る。防大には医務室があり、風邪などの治療はそこで受けられるが、婦人科はないため、外部の病院に通院するには指導教官の許可が必要となる。
そんな中でピルを処方してもらうため、「男の指導教官に言いたくもないのに申請に行ったら、『女子は生理が止まって普通だから。そういうケースはよく聞くよ』と言われた同期がいた」と話す者がいた。
また、なんとか横須賀にある民間病院にかかったところで、「『オリンピックに行った女性は血を垂れ流しながら走ってた』って言われたから、あそこ行かない方がいいよ」などという話をしたこともあったという。