「幹部が100キロ歩いて敵陣地に乗り込む時点で戦争に負けてる」

次に「体力」に関連する事柄だ。これは陸上要員で圧倒的に多かった。

シンプルに「1学年の時はずっと走らないといけなかったから足が痛くなった」「訓練、学生舎生活は体力的にキツかった」「体力勝負でどろんこになって、という訓練がどうしても好きになれなかった」などという意見はもちろんある。

腕立て、匍匐ほふく前進、銃を持って走る「ハイポート」……どれもしんどい。海上・航空とは少し異なり、体力至上主義のきらいがある陸上要員での退職者の中には、「航空だったらやめてなかったと思う」と話す者もいるくらいだ。

行軍では「元々靴擦れをしやすかったので1学年のころから半長靴が足に合わなくて本当に嫌だった。眠い中、痛みと共に強制的に歩かされる、黙々と歩いていて何やってんだろうって毎回思ってたし、なんとかこなしてた空しい感じがあった」

「幹部がこんな100キロとか歩いて敵陣地に乗り込もうとしてる時点で戦争には負けてる。結局精神を鍛えるためだけのもので、それでこんなに心身をすり減らすのって意味あるのかなと思ってた」などの意見が寄せられた。

余談だが、卒業後、出産を経験した同期たちと「行軍と出産、どっちが楽だったか」という話を何度かした。結果は半々くらいだった。私自身はかなりの安産だったこともあり、断然「出産の方が楽だった」派だ。女子にとっての行軍はそれくらいキツい。

軍人たちの足もと
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「お前がお荷物なんだから」「これだから女は」

また、何人かから挙がった「怪我」については、男女問わず防大生は怪我が多いのは確かだが、個人的には比率としては女子の方が多いように思う。

単に「怪我をして痛かった」からつらかったという意見もあったが、「怪我をすると普通の防大生活が送れなくなる。なんとかついていくのに必死だった」「周りに負担をかけて『何してんだ自分』と落ち込んだ」ことを苦しい思い出として挙げる者もいた。

ただでさえ、男子に後れを取っていると感じているところ、さらに怪我をすればその心理的負担は増すことになる。「体力がないことで男子についていけないことに起因するつらさ」を挙げる声も多かった。いくつか紹介しよう。

「自分は足が痛くなったときに受診して走らなくなったけど、周りには足が痛いのに走ってる人がいて、自分が甘えてる感じがしてつらかった」
「競技会の練習中、『お前がお荷物なんだから』と言われた」
「行軍中靴擦れを起こし、足の皮はベロベロ。必死に歩いてたが、後ろから荷物を持ってくれた男子にお礼を言ったら『これだから女は』と言われた」
「どの学年になっても結局体力勝負の競技が多い。どんなに頑張っても自分が足を引っ張っているのが耐え難い。自分の分の荷物を男子に渡して、男子が荷物を二つ持って走っているのに、ビリになってチームの足を引っ張る。それが屈辱だった」