女性学研究者の田嶋陽子さんは1990年代、テレビ番組『ビートたけしのTVタックル』で男性出演者たちと激しい議論を繰り広げて注目を集めました。「フェミニズムに出会って自分を取り戻せた」という作家のアルテイシアさんと田嶋さんが、フェミニズムについて、男性中心のマスコミについて、語り合いました――。

※本稿は、アルテイシア『フェミニズムに出会って長生きしたくなった。』(幻冬舎文庫)の一部を再編集したものです。

現代のビジネスウーマン
写真=iStock.com/Rattankun Thongbun
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ハイヒール履きたかったら履けばいい

【アルテイシア(以下、アル)】田嶋先生の魅力を語ってもいいですか(笑)。永遠に語れますけど、ひとつは自分の経験や苦しみをさらけ出して書いてくれてること。フェミニズムというとアカデミックな本が多い印象だったんですが、自分の魂の声で書かれてるところが刺さりました。

もうひとつは、ものすごく自由なところ。『エトセトラVOL.2 We LOVE 田嶋陽子!』で柚木麻子さんも書かれてましたけど、『ビートたけしのTVタックル』でジュリアナ東京を取り上げた時に、男性陣がパンツが見えてるとか、恥ずかしくないのかとか言ってる横で、田嶋先生が「いいよね、私はカッコいいと思う。私がもし若くて、こんなに綺麗だったら、こういう格好をして同じように踊りたい。踊っちゃうよー」と明るくキッパリおっしゃった。「女が好きな格好をして好きに楽しんで何が悪い」とあの時代から発信してくれていた。田嶋先生の言葉には自由、主体性、多様性を感じて、そこがほんとに大好きでした。

【田嶋】フェミニストは自分の責任でハイヒール履きたかったら履けばいい。で、苦しかったらよせばいい。その自由があることが大事。

【アル】田嶋先生は「フェミニストはこうあるべき」みたいな押しつけがないですよね。そのおかげで、フェミニズムは女性を自由にするものなんだ、女性が自由に選択できる社会を目指すものなんだ、と素直に思えたんです。

【田嶋】その気持ち、すごく大切だね。

「田嶋さんに謝っといてくれ」

【アル】ちなみに「TVタックル」で共演されていた男性陣は本当に男尊女卑なのか、演出としてやっていたのか、どっちなんでしょう?

【田嶋】あのね、野坂昭如さんていたじゃない。あの人はそんなにもののわからない人じゃないのね。彼の奥さんのシャンソン仲間を通して聞いた話なんだけど、「田嶋さんに悪かった」と言っていたって。それから石原慎太郎さんなんか、私の話も聞かないでめちゃくちゃなことを言ってたんだけど、あとで人を通じて阿川さんに「田嶋さんに謝っといてくれ」だって。

【アル】自分で謝れよ、ですよね。

【田嶋】ほんとそうよ。ただ男たちはみんな、自分たちに都合のいい既得権を守ろうとするからね。舛添要一さんだって、私に議論で負けそうになるとブスって言ったんだよ。だから私はハゲって言ってやったのね(笑)。そのハゲ発言がいつまでもみんなの印象に残ってるみたい。

【アル】向こうが先にブスって言ったのに。