「男子から『体力ないんだから、もっと自分ができることを積極的にした方がいいよ。じゃないと男子とうまくやれない』と言われた」
「学力ではトップだったのに、戦闘機搭乗訓練の順番決めの際に女だからって理由だけで最後にさせられた」
「いざ作戦を考えるというとき、当たり前のように『じゃ、お前は見張りな』と言われた。作戦なら私にだって立てられる。でもそこですら戦力外とみなされる。何も来るわけがない山の中で突っ立って涙を流した」
「『行軍中、女子はLAM(個人携帯対戦車弾、約13キログラム)とか持てないんだからさ、もっと下手に出ろよ』と言われた」など、枚挙にいとまがない。

体力の部分は、どう頑張っても補えないところがある。それに直面して苦しみ、男子学生からの「何気ない」一言にまた傷付く。おそらく、上記の発言をした男子学生は、自分がそのような発言をしたことを覚えていないだろう。ましてや言われた側の心に傷を付けたことなど想像すらしないだろう。

つらい訓練に追い打ちをかける「アンチ女子学生」の存在

「つらかったこと」として、「アンチ女子学生の目に留まること」と回答した者もいた。防大には、一定数「女子だから」という理由だけで存在を一段下に見る男子学生が存在する。

自分に自信を持てない状況下では、自分に否定的な者の存在がより大きくクローズアップされる。個人的な経験としては、女子学生を一段下に見る発言をしがちなのは、普段は「お前は頑張ってるよ!」などと声をかけがちな男子学生で、自身にも余裕がないときには急に「女子サゲ」になる傾向があった。行軍はその最たる例だ。

行軍では6人ずつ程度の分隊に一つずつ、機関銃(9キログラム)とLAM(13キログラム)が渡され、目的地まで持ち運ばなくてはならない。分隊員で持ち回りをするが、そもそも背のうと呼ばれるリュックも十数キログラムあり、4キログラムの小銃も携行しているので、女子はそれ以上の荷物をなかなか持つことができない。

男子学生自身も決して楽とは言えない状況の中、「女子学生がいる分こちらに負担が増えている」とイライラし出すと、上記のような発言が飛び出しがちだった。

取材の中では、「『これだから女学は〜』と言ってた奴に限って、卒業後に会ったら『俺普通の女と結婚したんだけど、めっちゃ弱いしすぐ文句言うし。防大の女子って頑張ってたんだな』とか言う。女関係で痛い目見たのかな(笑)」などという声もあった。