「防衛大学校」は自衛隊の幹部候補生の教育機関だ。その卒業生であるライターの松田小牧さんは「忙しなく動く上級生の姿、清掃や点呼の厳しさを見て、だれしもが着校したその日から『これが防衛大か……』と息を呑むことになる。例年、わずか数日で入学者の1割が辞めてしまうほどだ」という——。(第1回)
※本稿は、松田小牧『防大女子 究極の男性組織に飛び込んだ女性たち』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。
二千人の学生が生活する防衛大学校
2007年4月1日。私は京浜急行馬堀海岸駅からタクシーに乗り、防大にたどり着いた。
正門からは、白く綺麗な建物が見える。受験はすべて居住地にある施設で行われたので、防大を見るのは着校日が初めてだった。
持ち物は判子、文房具、洗面用具、下着、Tシャツと短パン、それにいくばくかのお金程度。そこまで大きいわけでもないカバンに収まってしまう程度の分量だ。とてもこれから大学生活を始める女子の荷物の量とは思えない。胸には新たな生活への期待と、厳しい環境でやっていけるだろうかという一抹の不安があった。
午前8時半から11時の間に着くよう事前に指示があったため、余裕を持って8時半過ぎに着くと、すでに多くの同期たちが到着していた。私の心情も手伝ってか、みなやや緊張した面持ちに見えた。
当時は大体が本人だけで来ていたが、今は保護者の付き添いも目立つという。防大は大隊制を敷いており、二千人弱の学生が四つの大隊に分かれ、校内の「学生舎」と呼ばれる寮で生活している。