自衛隊の幹部候補生を養成する「防衛大学校」の女子学生は、様々な困難を抱えている。卒業生であるライターの松田小牧さんは「男子学生と違って、女子学生は同じ部屋の上級生から指導されることも多いため逃げ場がなくなってしまう。ストレスを抱えてうつになったり自傷行為に走ったりしてしまう学生もいる」という——。(第2回)

※本稿は、松田小牧『防大女子 究極の男性組織に飛び込んだ女性たち』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。

座って頭をかかえている人
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「嫌いだから合わない」という選択肢がない

ここで紹介するのは、防衛大学校における「人間関係」についてだ。これは時として、心をひどく蝕む原因ともなる。「人間関係」と一口に言っても様々あるが、まず「人間的に合わない」というものがある。

別に防大でなくたって合う、合わないはあるし、合わない人間と毎日顔を突き合わせていればしんどい。だが防大では、「嫌いだから会わない」という選択肢がない分、余計につらい。

「上対番と仲良くなれなかった」「いきなり同期から距離を置かれるようになった」「あの上級生は苦手だった」等々、やはりそういった事態は起こり得る。

上級生同士の仲が悪いと、部屋の下級生が気を配るということもある。ただ、「人間的には嫌いだけど仕事はできる」や、はたまた「人間的には好きだけどどうしようもなく仕事ができない」ということもある。

次に、指導されることによって起こる事柄だ。防大生なら誰しも、これまでの人生で受けてこなかったような激しい指導を受ける。この「指導を受けること」を「しばかれる」と呼ぶ。「今日○○さんにかなりしばかれた」と、毎日どこかで誰かが口にしている。

この「しばき」にも、よい指導と悪い指導がある。幹部自衛官たる資質を伸ばすために目的をもって行う指導はよいが、防大ではしばしば「指導するための指導」が散見される。