新型コロナから回復した人数はなぜ放送されないのか
こうして意図的に練り上げられた嘘はほとんどの場合、バレません。
そこで、よく使われる手法の1つが、「オミッション」。事実の一部を省略し、強調したい情報を際立たせる手法です。
たとえば、2020年の新型コロナウイルスに関するニュースでは、回復して退院した患者数よりも、1日で新たに増えた感染者数の発表がクローズアップされていました。
特に民放の情報番組やワイドショーでは、感染者数の増加と症状の危険性を伝える場面が目立っています。もちろん、感染の広がりを抑制する意味があるのはわかります。
しかし、感染者数ばかりを強調する一方で、回復した人数、無症状で済んだケースが多いことを省略するようなオミッションには、メディアの意図を感じずにはいられません。
つまり、メディアは視聴者の不安を煽るニュースを好んで流している、ということです。
なぜなら、人間はネガティブな情報に注意を向けやすく、そこで不安を感じると、今度はストレスを晴らすための行動を取りたくなるものだから。
要は、事実の一部をオミッションしたネガティブニュースを流すと、多くの人が注意を引かれて視聴率が上がり、さらにその不安を解消するべく広告への反応がよくなるのです。
こうしたメディア手法も、視聴者の心理や購買行動を操るハイピングの一種だと言えるでしょう。
訓練を積んだ専門家でも、嘘を完全に見抜くことはできない
今でこそ、そういったケースはなくなってきましたが、私自身、ビジネスの交渉の場でハイピングを受けることがありました。こちらにとってマイナスになる情報は割愛され、興味を引く部分だけを強調。そのうえで、不利な契約を結ばせようとしてくるのです。
嘘を見抜ける確率は54%という数字を出しましたが、これは経験と知識によって上昇します。たとえば、嘘についての研究をしている心理学者は70%、要人警護を担って常に周囲を警戒しているシークレットサービスのベテランは80%以上の確率で嘘を見抜けるというデータもあります。
それに準じて言えば、私も人間の心理を見抜くメンタリストですから一般の人よりも高い確率で嘘に気づくことができます。ただ、それでも2割から3割の穴はあり、騙されるときは騙されてしまうのです。
そこで、私はハイピングやオミッションの対策として、相手の話に出てくる数字、データについてしっかりとメモを取るようにしてきました。そして、交渉の場で即断即決しないよう心がけていました。なぜなら、その場を離れたあとに相手の示した数字やデータの裏付けを取るからです。
すると、業界の平均とは違う数字が出ていたり、伝えられたデータは全体の一部分を都合に合わせて加工したものであったり、といったケースに気づきます。
つまり、相手は重要な部分をオミッションし、ハイピングを仕掛けていたわけです。
事実は都合のいいように捻じ曲げることができます。でも、捻じ曲げられていることに気づければ、そんな相手は信用しなければいいだけです。
そこで、あなたがハイピングを仕掛けられたとき、その被害を回避できるよう嘘を見抜くためのポイントを紹介します。