組織の大小を問わず使える「権限委譲」テクニック

各種の拠点や部門間の相互依存性が高い場合には、組織のファンクションを単位とする権限委譲が有効となる。このことはグローバル・サプライチェーンを動かす巨大メーカーでも、地域の急性期病院でも変わらないようである。

組織の構成員の能力を高めたり、情報システムを整備したりしておくことも、平時においての危機への備えとして重要だが、緊急時には組織の運営方法の切り替えの判断をリーダーが行わなければならず、この判断が危機下での組織のパフォーマンスを左右する。本稿の二つの事例から学んだポイントをまとめておこう。

・危機が生じた後は、組織のリーダーがすべてを引き受け意思決定するのではなく、適切な拠点や部門に権限を委譲することで、早期の臨機応変な対策が実現する。

・この権限委譲には、地理的な範囲を絞っての委譲とともに、ファンクションを単位とする委譲があり、組織の拠点や部門の相互依存性が高い場合には、後者の有効性が増す。

・危機のもとでのファンクションを単位とする権限委譲の有効性を高めるためには、あらかじめファンクションごとの危機対応の専門スタッフを確保し、これらのスタッフに各種のプロジェクトなどで現場を踏ませることで土地勘を養わせておくとよい。

・ファンクションを単位とする権限委譲は、専門スタッフを中心としたチームに対して行うとよい。組織全体のリーダーが担うべき大きな役割は、この緊急対応のチームの編成をどのように行うかである。
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