▼5大リスク(4)再就職
インフレリスクも長く働くことで軽減
現在は働きながら年金を受け取ると収入の額によっては年金が減額される。これを在職老齢年金と呼ぶ。仮に繰り下げ受給を選択しても、減らされた額が繰り下げされるだけなので「働くと損をする」というイメージがぬぐえない。その在職老齢年金を廃止することも検討されている。実現すれば、定年後に働く環境がより整備される。
また、再就職するなど長く働くことはインフレリスクを軽減することにもつながる。老後資金を貯蓄だけで賄おうとすれば、インフレの影響を受けてしまう。働いて給料を得ている場合はどうか。給料は基本的に物価に連動する。物価が上昇すれば、それに合わせて手取り額も増加する。つまり、働けることは物価上昇リスクにも対応できることにつながる。
もちろん、貯蓄や、iDeCoなどの非課税で有利に運用ができる制度を利用して備えるべきだが、長く働くことこそが最大の備えであることを忘れないでほしい。
できるだけ長く働くために必要なのは体力と能力。多忙な人も、老後のことを考えて健康の維持に努めてほしい。加えて、心構えの1つのとしては、新しいものを毛嫌いしないこと。最近でいえばスマホ決済が普及し始めているが、話題になったものや新しいことをバカにせず、使ってみる積極性が必要。能力とは環境の変化に対応する力ともいえる。現役世代が当たり前に受け入れているものに対応できなければ仕事がしにくくなる。
▼5大リスク(5)医療費
「人によりけり」のオプションは慎重に
老後生活で誤算が生じるとすれば、想定以上に長生きすること。「平成30年簡易生命表」(厚生労働省)によると、平均寿命は男性が81.25年で女性が87.32年。しかし、平均寿命を基準にしてマネープランを立てるのは危険だ。多くの人が必ずしも平均寿命で亡くなるわけではないからだ。
同じく「平成30年簡易生命表」によると、90歳まで生存する者の割合は男性26.5%、女性50.5%となっている(図5)。人生100年時代といわれているとおり、100歳まで資金が底をつかないマネープランを考えておく必要がある。
出費を抑えるには生命保険の見直しも効果的だろう。子どもが独立してしまえば高額な死亡保障は必要ない。一方で年齢が上がるほど病気になる確率は高くなるが、医療保険に加入することはさほどお勧めしない。支払った保険料分を取り戻すことはほぼ不可能だからだ。