次女は「今からまた働きたいです」とぽつりとつぶやいた
市役所へは母親が電話をし、相談の予約を取りました。
しかし相談数日前になってどうしても長女が同席できなくなってしまいました。母親は「役所は怖い。一人では不安」と言って心配そうにしていたため、母親と長女のたっての希望で筆者が同席することになりました。
市役所での相談当日。母親が中心となって次のようなことを話しました。
・次女の生活能力やコミュニケーション能力
・母亡き後も自宅で過ごしたいこと
・一人暮らしを想定した場合どのようなことで困りそうか?
長い話になりましたが、女性の担当者はそれらを丁寧に聞き取ってくれました。その後、担当者から次の相談先である相談支援センターの紹介を受け、その日の面談は終了となりました。
帰ろうと皆が片づけをしている最中、次女が何かまだ言いたそうにもじもじしていました。
気になった母親が発言を促すと、次女は小さな声で「今からまた働きたいです」とぽつりとつぶやきました。
「お金はたくさん稼げなくていいんです」
「えっ?」その場にいた全員がびっくりしてしまいました。
これには担当者も驚きを隠せない様子でした。
「ご本人は50代半ばですし、今から仕事をするのは大変だと思います。それに職場でまた人間関係のトラブルになるリスクもあります。ひきこもり状態を解消したいのであれば、レクリエーションなどができるデイサービスを利用するのはどうでしょうか?」
しかし次女の決意は固いようです。
「デイサービスではなく仕事をしたい。お金はたくさん稼げなくていいんです。自分の能力でできる仕事がしたいです」
そこで筆者は担当者に聞いてみました。
「実際のところ、50代だと仕事を探すのは厳しいでしょうか?」
母親も続きました。
「できるだけ次女の希望をかなえてあげたいと思っているんです。仕事の相談にのってくださるところはありませんか?」