将来への不安を和らげるにはどうすればいいか。医師の和田秀樹さんは「起きる確率の高い事態については、正しい知識や多くの情報を得て対策を考えておけばいい。たとえば、老後のお金が心配であれば、60代のうちに『最低生活費』で暮らせるかどうかを体験しておくことをお勧めする」という――。

※本稿は、和田秀樹『60歳からの脳と体が若返るワークブック』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

封筒に入った10枚の1万円紙幣
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「老後の不安」は考え始めるときりがない

今、この瞬間を楽しみたいと思っても、ふと先のことが頭をよぎると、一気に不安になってしまうものです。

「認知症になったらどうしよう」「介護が必要になったらどうしよう」「生活費が立ち行かなくなったらどうしよう」「がんになったらどうしよう」など、考え始めるときりがありません。

もちろん歳をとっていく以上、そうなる可能性は少なからずあります。

だから、考えてもムダ、とまでは言えないでしょう。「隕石が空から降ってきたらどうしよう」というような、その確率がゼロに近いことを心配するのとはまったく別の話なのです。

ただし、ただ闇雲に不安がるのは賢明ではありません。

十分起こり得る心配な事態に対しては、実際にそれが起きたときに自分がどう対処するのかを、体の自由が利かなくなったり、認知症の症状が出始めたりする前に考えておくことは大事なことです。

いざそうなってからでは、時間的な制約が出て選択肢が一気に狭まったり、自分で考えたりすることができずに誰かの言いなりにならざるを得ないという事態にもなりかねません。

そのような対策をしっかり考えておけば、不安がすべて解消するとまでは言えないまでも、必要以上に不安を増幅させずにすみます。

「敵」を知ることで「安心」を増やしていく

実態をよく知らずにいるほどネガティブなイメージばかりが膨らんでいくので、正しい知識やできるだけ多くの情報を得ることで「敵」を知り、「いざそうなってもなんとかなる」という自信を育てておきましょう。

また、頭の中でシミュレーションするだけでなく、可能であれば実験的に体験しておくことをおすすめします。できれば使いたくないなあと思っている介護用品なども、実際に使ってみると意外と使い心地がよかったりして、抵抗が薄れるかもしれません。

もちろん、使い心地が気に入らなければ、別のものを試してみてください。

このような実験を繰り返すことができるのも、切羽詰まっていないからこそ。そうやって「安心」を増やしておくことが、将来にも備えながら「今を楽しむ」コツなのです。

ただし、情報や制度は日々更新され、介護用品にしろ、なんにしろ常に進化していますから、2年後、3年後には、状況がまるで変わる可能性は高いです。

先を見据えるために行う実験は、一度やったからといって安心せず、ある程度、時間がたったら改めてやり直してみることを心がけましょう。

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