「月10万円以内」で生活できればこわくない

今、この瞬間を楽しむことが、60歳からの人生を充実させる鍵ですが、「長生きしたときに備えて切り詰めた生活をしている」という方はたくさんいます。

でも生きている限り年金は受け取れますし、それが居住地ごとに設定されている「最低生活費」を下回った場合は、生活保護の申請が可能です。最低生活費がもっとも低く設定されている地域でも月10万円なので、もし金銭的に困窮したとしても、月々10万円の暮らしは、手を挙げさえすれば保証されているのです。

だからせっせと貯金する前に、「1カ月10万円以内での暮らし方」を体験してみてはどうでしょう?

案外なんとかやっていけそうだと実感できたら、今を犠牲にしてまで無理に貯金しなくてもいいや、と安心できるかもしれません。

もちろん是が非でも生活保護を受けろと言っているわけではありませんが、将来の安心材料の一つとして、本当に困ったときにはこの手があることを覚えておきましょう。

孤独でいるほうが健康にいい人もいる

「介護保険制度」とは、一人暮らしの高齢者が生きていくための要<かなめ>の制度です。

実情を聞くと、地域によってはサービス事業者が不足しているとか、利用料が高すぎるなど、まだまだ問題はあるようですが、身近に頼れる人がいなくても、公的に支援してもらえるという、かなりありがたい制度であることには間違いありません。

高齢者の孤独は避けるべきものだと思い込みがちですが、この制度がスタートしたことで必ずしもそうではなくなりました。気兼ねなく好きなことが頼めるというメリットもありますし、人間関係に疲れを感じやすい人にとっては、むしろ孤独でいるほうが健康にもいいという考え方もできます。

そこで、1週間くらい人との交流を断って、自分が孤独を楽しめるタイプかどうかを見極める実験をしてみましょう。意外に快適だなと思えれば変に孤独を恐れる必要はなくなります。やっぱり寂しくて耐えられないという方は、気が合う人たちとの交流を大事にするなど孤独にならないための対策を講じておくのがよいと思います。

湖のそばのベンチに一人で座る高齢女性
写真=iStock.com/libertygal
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