「このようなケースで有効なのは、作業のフロー図をつくることです。作業や仕事の流れを見えるようにして、問題が発生する『ネック工程』を発見し、解決方法を考えるのです。特定の工程や職場が突出して生産性が高くても意味がありません。大事なのは『ネック工程』の引き上げです。たとえば人が足りないのか、機器やシステムの能力が低いのか、何か無駄なことをやっているのかなど、その原因を見極めて改善することが、全体の生産性の向上につながります」(柴田氏)

全体の生産性は、問題が頻発するネック工程の生産性に引き下げられてしまう。ネック工程の改善は、全体の生産性の改善に直結するのだ。また、ネック工程を改善すれば、新たなネック工程が見つかるもの。改善には終わりがないと考え、取り組みたい。

同時に、「仕事の標準化」も大切だと、柴田氏は語る。

「作業ごとに、必要な時間や進め方のフローを明確にし、実際にかかった時間をきちんとプロットし、そこでムリなく品質を保てる最小時間の基準をつくる。トヨタではこれを『標準化』と呼び、現状の正常・異常の判断基準の材料として活用するのです」

「標準化」して設定した時間内に仕事を進められなかったのであれば、なぜ遅れたのかをきちんと分析する。そして、改善方法を考えていく。

さらに「標準化」は、残業を減らすことにも有効だ。

「トヨタでは、ある人が過剰に残業していた場合、標準よりも長く時間がかかっているのか、標準どおりの時間でやっているが、どうしても終えられないのかを分析します。仕事を抱え込み、人より多く働いているならば、その仕事をほかの人に移さなくてはいけません」(柴田氏)

組織として業務フローをつくって、全体の仕事の流れを明確にし、さらに標準化して作業にかかる目標時間を設定する。それが時間内に終えられないと判明したならばその要因を分析し、必要に応じてムダの削減や仕事の再配分をしていくことが簡単にできるのである。