「立てる」と「定位置」で、スピードアップ

では、事務処理のスピードを上げるために、各人ができる工夫にはどんなものがあるだろうか。

「まず実践していただきたいのが、『整理』と『整頓』です。この2つをしっかりやるだけでも、作業の無駄がなくなり、効率がアップします」(柴田氏)

整理とはいらない物を捨てること、整頓とは整理後に残っている物をすぐに取り出せるように保管することを指す。着手すべきは、デスク周りのチェックだ。不要な物は処分し、必要な物をすぐに取り出せるように整頓していく。

書類の整頓の仕方にもポイントがある。柴田氏は、書類の平積みは絶対にダメ、と指摘する。書類を積み上げれば、埋もれた物は見返されることはなく、重要な案件が見逃される可能性もある。

「トヨタの生産管理部では、書類は10秒以内に取り出すことが暗黙のルール。上司から『あの書類を見せてほしい』と言われて探し出すのでは時間の無駄です」

これは、書類のみでなく、オフィスで使用するあらゆる物に当てはまること。

たとえば、ちょっとメモをとるだけでも、机の上が雑然としていれば、えんぴつを探すのに時間をくってしまう。このように、探し物をするために1日に30分使った場合、1カ月に20日働くとすれば、1年で600分×12カ月=7200分も、物を探すことに時間を費やすことになる。1日に8時間働くとすれば、年間15日も無駄にしていることになるのだ。

トヨタには「先入れ先出し」という言葉がある。先に仕入れたほうを先に使うという意味だが、書類を古い物から新しい物の順に並べてボックスに立てて保管し、古い物から処理することを基本ルールとすれば、「先入れ先出し」の仕組みをつくることができる。物を積むというのは、基本的にまずい行動。整頓をする際は「立てる」ことを心がけよう。

また、整頓をする際に役立つのが、物を置く定位置を決めることだ。

「定位置を決めるためにおすすめしているのが、『姿置き』です。姿置きとは、置き場所に戻されるべき物の形を表示する方法。大型の定規など、使用頻度の低い物は個人で所有せず、オフィスの一カ所に集めて共同で使うようにする。使った共有物はかならず姿置きの枠の中に戻すように徹底するのです」(柴田氏)