トヨタでは「書類は10秒以内に取り出す」がルール。働き方改革の名の下、生産性向上が求められる今、事務処理のスピードを上げる秘策を、専門家に聞いた。

生産性を引き下げる、ネック工程を探せ!

「事務職の人は、ありったけの時間をフルに使って仕事をしがち」と語るのは、OJTソリューションズの柴田毅氏だ。同社は、トヨタ自動車とリクルートグループによって2002年に設立。無駄を徹底的に排除した仕事の進め方を行うトヨタに在籍したベテラン技能者がトレーナーとなり、様々な企業に派遣されて人材育成や環境整備に取り組んでいる。トヨタの技術部門で40年勤務した柴田氏も、製造業の購買部門や自治体を顧客として活躍するトレーナーの1人だ。

近年、政府が働き方改革を訴えていることもあり、勤務時間の短縮がさかんだ。そのなかで、事務処理を改善したい、という問い合わせが増えているという。

「事務系の職場において、業務効率化の具体的な方法や問題点の発見が難しいのは、言葉や情報を主として業務を行っているから。自動車などの製造現場であれば、生産数や不良品数など、物や数字として把握できるため、改善すべき内容や基準も明確になりますし、ボトルネックも発見しやすいのです」(柴田氏)

そのトヨタが実践しているのが、仕事の「視える化」だ。

「トヨタにおける『視える化』とは、情報を組織内で共有することにより、現場の問題の早期発見・効率化・改善に役立てること。そのために図やグラフにして可視化するなどの方法があります」(柴田氏)

たとえば、速やかに稟議書を作成したにもかかわらず、承認に時間がかかってしまうというようなことはないだろうか。個人で仕事を効率化しても、組織内での進め方に問題があると生産性が上がらないということが、職場では頻発する。