※本稿は、桑原晃弥『トヨタ式5W1H思考』(KADOKAWA)を再編集したものです。
「掃除をしても、気づけば元通り」を解決したい
個人でも職場でも「いつの間にかものが増えていく」経験のある人は多いのではないでしょうか。ある時、「このままではダメだ」と断捨離や片づけに挑戦し、「ああ、これですっきりした」とほっとしたのもつかの間、それから半年、1年とたつうちに、ものは少しずつ増え、以前とあまり変わらない状態に戻ってしまうというのはよくある話です。
結果、「ものが増えるのはしかたがない、乱れてきたらまた整理整頓をすればいいや」と開き直ることになります。こうした繰り返しは個人ならともかく、企業の現場で整理整頓が「年中行事化」するのは褒められたことではありません。
できるなら「いつの間にかものが増える」ことも、「整理整頓の年中行事化」も避けたいものです。
ここで、トヨタ式5W1H思考を取り入れたスーパーマーケットの事例があります。スーパーマーケットといえば、かつては好調な売上げを誇っていたにもかかわらず、近年は競争の激化や景気の低迷といった影響もあり、売上げは伸び悩み、減収が続くケースも少なくありません。
A社も同様です。グループの数字は決して悪くないものの、スーパーの業績が伸び悩み、何とかかつてのような好調を取り戻せないかと考え取り組んだのが、トヨタ式を利用した店舗改善でした。
半年間、トヨタ式のコンサルタントに依頼してさまざまなノウハウを教わったのち、A社の社員数名がチームを組んで、店舗の改善に取り組みました。
汚れるのにも、まっとうな理由がある
改善チームが最初に赴いたある店舗は、かつてはA社でもトップクラスの売上げを誇っていましたが、最近では競争の激化により減収が続いていました。チームが最初に取り組んだのが在庫の整理整頓です。社員総出でバックヤードの整理を行いました。
すると、「一体いつから置いてあるのだろう」という在庫がたくさんあり、在庫をどかすと床一面に埃(ほこり)がたまっていました。床の色が明らかに他と違う場所もあり、何年もの間、そこに置かれたままで、決して動かされることがなかったというのが一目瞭然でした。
もはや箱を開けたところで売り物になるとは思えませんが、こうした「決して売れることのないもの」もお金を払って仕入れたのはたしかであり、いわば「お金がそこに積まれていた」ことになります。