さあ本番。カメラは回るがもはや硬さとは無縁だ。相方はよくツッコミ、私も精一杯ボケた。

そして、最後のオチ。

「だいじょうぶ。本のタイトルは~」

……痛恨のミス。「本の」ではなく「本は」だった。助詞を間違え、あとはシドロモドロ。最後の最後でパニックに。やり直しである。が、杉本氏、上條氏は笑顔で褒めてくれる。N氏も余裕の表情。ラスト以外はおおむねうまくいっているのだ。

「そうだ。せっかくここまでできたんだし」――N氏がそうつぶやき、フットワーク軽く会議室を出た。待つことしばし、編集部員を5名引き連れてきた。さすがはツッコミ。鋭くプレッシャーをかけてくる。

しかし肝も据わった。助詞さえ間違わなければ、こっちのもんである。

さあ、BGMとともに、デマ・サプが手を叩きながら登場する。

「原稿早く見せてよ」「まだ一行も書いてません」「ええーッ!?」「だいじょうぶ。本はタイトルが9割ですから」「……正しーい!」――拍手! デマ・サプは「売れる本のタイトル」を演り切った。

デマ・サプいざ本番。録画カメラやギャラリーに臆することなく演じ切った。いちおう拍手!

「よかったです。先に客席があったまってたら、もっと爆発してましたよ」と、上條氏からあたたかいお言葉が。得難い経験をさせてもらった。

日々の雑談や宴会トークに活かすヒントが、ここには多数詰まっている。テーマを明確にすること。フリはその集団に共通のものを。オチをいくつか考えたら、あとは難しく考えずに見切り発車。会話は呼吸。人の話をよく聞く。話すときも聞くときも、身振り手振りを忘れずに。

思わぬ副産物もあった。様々なメカニズムを知ることができたおかげで、漫才を観る楽しみがさらに増えそうである。おっと、テレビ桟敷で「フリとオチの関係が云々」などと訳知り顔で話すと、嫌われてしまいそうだ。「知ったかぶりはNG」も雑談力の基本である。

※株式会社スロウカーブ 漫才研修(http://www.slowcurve.co.jp/manzai_kenshuu/

(石橋素幸=撮影 講師:構成作家 杉本雅彦、(株)スロウカーブ代表 上條誠)
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