プロが一日指導! 初めての「漫才」

2016年2月某日、午前10時のプレジデント社会議室。講師は構成作家の杉本雅彦氏と、企業研修を企画する(株)スロウカーブの上條誠代表。お二人とも常に笑みが絶えぬ感じで、両肩からハッピーオーラを出している。

「笑い」を体得することは、コミュニケーションの力を上げるのにうってつけである。そのために、本来なら企業向けに1泊2日で行う研修メニューを、1日で消化できるように組んでいただいた。

研修のレジュメ(写真上)。杉本氏(同下)は「ビビる大木のオールナイトニッポン」等を担当、ラジオ・TVやライブ等で活動するほか、お笑いタレント養成学校の講師も兼ねる。

その流れはざっとこんな塩梅だ。

(1)コンビ名決め
(2)座学(なぜ人は笑うのか、など)
(3)模範漫才のコピー、披露
(4)座学(オリジナル漫才のネタ作り)
(5)練習
(6)実演(VTR撮り)

真っ白なシロウトが、果たして1日でここまでたどり着けるのか……。

まずは「コンビ名決め」。

コンビの関係性や雰囲気を顕し、「こういう理由だから」と説明できる命名がいい。コンビ名がネタ作りにも関連してくるというから、とても大事なのである。

で、さらりとした協議の結果、「ザ・デマンド&サプライ」とした。

需要と供給。経済情報誌掲載のコンビに相応しい。「デマ・サプ」と略せるところもいい。編集者の需要にライターが応えるという意味では私がサプライか。D(デブ)が私で、S(シャープ)がN氏、という外見上の含みもありそうだが。つまり、どっちがどっちでもいいのである。

「オチ」にばかり気持ちを向けない

続いて座学。

そもそも人はなぜ笑うのか。

「予想を裏切られるから」である。予想=フリ、裏切り=オチという。フリは、いわば「常識」である。観客に常識を想起させておいて、それをすぱっと裏切るのだ。

たとえばコンビニを舞台にした漫才。ボケ役が引き戸を引いて入店すると、「障子か!」とツッコミ。フリはガラス張りの自動ドアだから、フリが裏切られて軽い笑いが起こる。これが笑いの基本原理だ。

なるほど。笑いを取ろうとすると、オチにばかり気持ちが向くところだ。大事なのはフリ。つまり、誰もが常識として知っていることを、まず話の最初に持ってこなくてはいけない。

「たとえば、同じコンビニネタでも、『火星のコンビニ』では難しくなる。どんな形態なのかが誰にも想像できませんから」(杉本氏)

フリは複雑にしない。常識であれば、やる側にとっても難しくない。大きく納得した。