「テーマ選び」と「話の構成」が大切

日常の会話で人を笑わせる場合、このフリとオチを一人でこなすわけで、基本的な構造は同じだ。

「オチに持っていくには、笑わせるためのテーマ選びと、その前に何をどうフっておくか、という話の構成が大切なんです。雑談のうまい人は、話す前にそこをあらかじめ頭の中でつくり上げていますし、途中から話が迷走しても、『あれ、オレ何話してるんだっけ?』『何か問題でも?』などと、その迷走じたいを落とす一言も用意しています」(同)

深遠な世界だ。ぐいぐいと座学は進み、我々は頷かされるばかり……っと、座っているだけでは漫才はできない。次は模範漫才のコピーだ。

プロが演じる模範動画をプロジェクターで観て、台本を片手に真似る。テーマは「ハンバーガー・ショップ」。月並みなチェーン店と一味違うショップとは? がテーマだ。

ここでボケとツッコミを決める。どう考えても私がボケタイプなのだが、模範を下敷きに両方やってみて、やはり私がボケ、N氏がツッコミに決まった。ちなみにN氏は大学の剣道部員だった猛者。踏み込みの鋭さがツッコミ向きである(私は元アメフト部員だがボケ適性には関係ない)。

プロの模範漫才(写真上)を模倣し、動画を撮ってチェック(同下、左から須藤、N、上條氏)。客席のほうを向いたり身振り手振り等々見慣れたプロの所作は、実はちゃんと意図があるものだと気づく。

同じく左右の立ち位置も決める。観客から見て、私が左だと具合がいいようだ。台本には座学で教わった「フリとオチ理論」が巧みに散っているから、流れがつかみやすい。オススメのビックリバーガーって……天ぷらうどんのことかよ! テリヤキバーガーのセットでもれなくついてくるのが……布団圧縮袋だと!? オチがぶっ飛んでいるが、基本に適っているのが実によくわかる。

台本片手に模範を演(や)っていると、「じゃあ今度は台本なしで」とくる杉本氏。まだほとんど覚えていないから「えっ?」と腰が引けるわけだが、「一字一句、台本を暗記しようと思うから覚えられない。ざっと流れを把握するくらいで」という。

そう、「とにかくやってみる」。このアドバイスが素晴らしい。

模範漫才の実演では、プレゼンテーションの仕方を注意された。相方のほうばかり向いていてはダメで、常に客席を意識する。ときに顔を前に向けたり、身振り手振りを交えたり。いざやってみると、プロの漫才ではそのあたりの呼吸が完璧だとよくわかる。残念ながら、わがデマ・サプはそのあたりがなっていない。需給のバランスが悪いのである。

しかし杉本・上條両氏は褒め上手だ。いいところを笑顔で讃えてくれる。こちらも調子に乗り、アドリブ(天ぷらには茶メシも付いてますよ、など)をかます余裕も出てきた。褒め上手、乗せ上手である。