人を「笑わせる」技術は、人の話を「聞く」技術より難度が高いのは周知の事実である。その習得に意欲を燃やす、口下手の中年オヤジたち。彼らは果たして、たった1日で「漫才師」になり切ることができるのか!?

50代の両名で急遽コンビを結成!

漫才をやりませんか、というのだった。

「観にいきませんか」ではなく、漫才をやろうって誘いなのである。

もちろん私はその筋の関係者ではなく、オチ研出身でも演劇経験者でもない。人生51年余、もちろん漫才未経験。それどころか上がり性でカツゼツ悪く、人前で喋るのは大の苦手。そんな私が漫才とは……。

以前にも似た誘いを受けた。「相撲、取りませんか」。確かに私は太ってはいるが、相撲部でもないしまわしも持っていない。即座に断った。

しかし、今回は二つ返事で「やりましょう!」と快諾したのである。

まず、楽しそうだ。この年になると未経験の取材も少なくなるから、新しいチャレンジというのも面白い。相撲は体力的にも厳しいが、漫才ならなんとかなりそうだし。「オマエ、漫才やったことある? オレはある」と友人に自慢できるのも欣快だ。

そして、「雑談力」強化に相当に役立つらしいからだ。漫才で人を笑わせる技術が磨ける。仕事柄、人と話すことは多い。現場が笑いに満ちていれば、取材は大成功だろう。

指導のプロが1日研修で指南してくれるという。相方は編集部N氏。

一度雑談したことがあるくらいの間柄。フレッシュなコンビである。

(左)須藤靖貴氏(右)プレジデント編集部N氏

「で? 漫才の台本は? 初心者向けのサンプルでもあるんですか」
「いえ。我々で作るんです」
「え?」
「で、練習して、本番に臨みます」
「本番? 1日で?」
「完成するまで終わりません。面白くないと叱られます」
「叱られるって……」
「形になったらビデオに撮って、それをプレジデント・オンラインで動画配信する可能性もあります」

動画配信……。即座に断るべきだったかと後悔したが、もう遅い。

かくして、私は人生初の漫才に向けて研修を受ける身となった。