信賞必罰が逆効果になることも

ではどうする。策を講じて作り出すしかない。危機感は作り出せるのか。社長はこれに挑戦した。

社長は考えた。なぜ目標を達成しなくても平気なのか。痛くもかゆくもないからである。終身雇用、月給制、それに受注型産業ともなれば公務員に近い精神態度を身につけていく。それは、会社がそうしているのだから、社員を一概に責めることはできない。

直接、生身にこたえる方法をとる。部門の目標には平然としていても、自分の月給には誰でも敏感である。実績と目標のギャップが管理者個人の身にビシビシ響くようにする。それには賞罰を制度化するとよい。業績をあげなければ、たとえ社長でもすぐクビになるアメリカを見習おう。

社長は減俸降格と報奨昇給の一覧表を作った。年間目標達成率80%以下の場合は降格、1カ月の目標達成率70%以下の人は5万円の罰金、個人報奨とは別に目標達成部門には月10万円の賞金等細かく決めた。

この程度の信賞必罰は以前から実行している会社も多いが、この商事会社は初めての試みだった。これを発表すると会社全体が暗くなった。

社員は「訪問販売ならいいが、うちのようなルートの受注営業の会社にはこういう制度は合わない。社長はおかしい」と批判した。社風は荒み、社員は仕事をしなくなった。売上は下がった。もちろん狙いの危機感は生まれなかった。