「自分に厳しく部下にも厳しい」は上司としてNG

部下がみな意欲的に仕事に取り組み、高い成果をあげる部門の上司とはどんな人か。

上司の対応はつぎの4つに分けられる。(1)自分に寛大、部下にも寛大。(2)自分に寛大、部下には厳格。(3)自分に厳格、部下には寛大。(4)自分に厳格、部下にも厳格。

道徳では「自分に厳しく、他人には寛大に」と教える。求道的人格者型とでも言おうか。つねに自分を厳しく律していく。模範となる立派な人である。

『ザ・鬼上司!』(染谷和巳著・プレジデント社)

このタイプにも欠点がある。自分が過ちを犯すまいと努力する。人のふり見てわがふり直すのはうまい。そのかわり、人の過ちをとがめることができない。他人がすべてこの人のように、人のふり見て反省する人ならいいが、言わなければわからない人、叱らなければ直らない人、罰しなければ身にしみない人といろいろおり、こうした人々に対して無力である。組織のリーダーとしては問題である。

人は誰でも他人からよく思われたい。嫌われたくない。好かれたい。支持されたい。愛されたい。この社会的欲求は女性や若い人ほど強いようだが、大人の男も弱くはない。

寛大であれば、人から好かれる。親も学校も「人には親切に」「相手の立場を尊重して」「友人を大切に」と教える。

社長の中には性格が温厚な人が少なくない。その会社は規律にルーズで、全体にだらけてしまっているといったケースがある。

マキャベリは『君主論』の中で、ハンニバルとスキピオという対照的な2人の将軍を例に、これを説いている。人に寛大なスキピオは、兵士の勝手気ままを許し敗れた。非人道的で残酷なハンニバルの軍は、兵の乱れなく指揮官への反抗もなく常勝の軍隊であった。

上司として1番優れているのは、(4)「自分に厳格、部下にも厳格」であろう。しかし人の行為に絶対はない。たとえば、上司が寝坊して遅刻をしたとする。この上司は部下の遅刻を叱れなくなる。(1)「自分に寛大、部下にも寛大」になってしまう。したがって、上司は「自分に厳しく、部下にも厳しく」をモットーにしてはならない。