いいのよ、できることだけやってね

大学を出て商社に就職した羽村君。

上司が“こっちの言い分”も聞かずに一方的に仕事を命じることに耐えられず、2カ月で退職。親類の世話で一部上場の製造会社に再就職するが、今度は仕事の内容が気に入らない、自分の能力を発揮できないと1カ月で退職。

その後も勤めては辞めるを繰り返しフリーターを続け、30歳近くになって流れ着いたのが荒田の会社。

若い人が皆こうだとは思わないが、こうした傾向を持つ人が増えているようである。

『ザ・鬼上司!』(染谷和巳著・プレジデント社)

なぜ羽村のような人ができるのか。貧困、空腹を知らない、厳格な規律に縛られて生活したことがない。先生や親など周囲の人から叱られたことがない。こうした社会環境がすくすくのびのび育てた。これが1つの原因。

もう1つは15年以上もペーパーテストに明け暮れ、これでいい成績を上げれば優れた人間と見なされるという価値観を身につけてきたこと。問題集の問題を解く能力は伸びた。眠る時間を削って努力もした。そこそこの大学に入ったことで自信がついた。「自分は優秀だ」というプライドが高くなった。半面、自分の部屋で1人でいることが好きな人間になった。集団生活、人間関係といった分野では赤ん坊のままである。

この2つの原因から、気に入らないことはしない人、できることしかしない人、人と一緒に仕事することのできない人、組織不適合の人ができた。

こうした人々を「青い鳥症候群」と呼ぶそうだ。羽村が求めている青い鳥はどのようなものか。自分をお客様のように大切に扱ってくれる会社である。自分が好きなことを好きなようにできる会社である。失敗しても遅れても叱られない会社、「いいのよ、できなければ。できることだけやってね」とやさしく言ってくれる母親のような上司がいる会社である。

こんな会社があるわけがない。