なぜ「適性検査」が存在するのか
【真衣(母)】それにしても、このコーヒーおいしいね。どうやって見つけたの?
【マル(娘)】豆チャートを参考にしたんだ。コーヒー豆ってたくさん種類があるじゃない? これがないと素人目にはなにを選んでいいかわからないからさ。飲んでみるまでわからないってのは困るから、便利。
【ダイ(息子)】レーダーチャートで目には見えない特徴がわかり、さらにはまわりと比較したときの特徴をも可視化する……。既視感がある(ガサゴソ。カバンからA4サイズの紙を取り出す)。
【真衣】わぁ。これダイの? 特徴が見える化されてるじゃん。それに、誰と誰の特徴が似ているかまでマッピングされている。
【マル】まさにコーヒー豆と同様に、人の特徴がわかるようにできている。課題設定力が平均より高くて、リーダーシップは平均以下と。でも、論理的思考力が高く、行動力もまずまずと。お兄ちゃん、意外にバランスがいいね。
人材開発業界の大ヒット商品「適性検査」
【ダイ】なんだよ、意外って。完璧な人間なんていないんだぞ。でも、僕は豆じゃないんだよ。勝手に平均と比較されたり、類似性でマッピングされたり。うぅ……。
【真衣】母さんもコンサルティング会社にいたころは、こういうシートを基にクライアントにフィードバックをしていた。平均より小さくいびつに表された自身のレーダーチャートを見て、うつむくダイのような人がいれば、逆に「俺ってやっぱり天才かも」とドヤ顔の人もいた。まさに悲喜こもごも。
【マル】人間もコーヒー豆同様に、ぱっと見では酸味があるのか、苦みが強いのか、わかんない。中身の「人となり」がわからないと、選び間違えるかもしれない。だから、「科学的にあなたの成分を調べましたよ」というのは説得力がある。
【真衣】そう。「いやいや、こんなのそもそも幻の能力に基づくものですから!」なんて言う人には出会ったことがない。これぞ人材開発業界が生んだ大ヒット商品「適性検査」ってやつですね。
これをやらないと、「社員のことをよく知らないまま、配置や抜擢などの重要な決定をしていませんか?」との批判に遭いそうなオーラまである。