なぜ人類は存続できているのか。米国の精神科医である大山栄作さんは「約200万年もの長い間にわたって人類が存続し、繁栄してきたのは、外向型ではなく内向型が人類を支えてきたからだ」という――。

※本稿は、大山栄作『精神科医が教える「静かな人」のすごい力』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

チーム一丸となっている人たち
写真=iStock.com/Rawpixel
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利己的な人ばかりでは生き残れない

冷静さ、思慮深さ、洞察力、客観力、独創性、集中力、傾聴力、共感力……。「2人に1人いる」とも言われる「内向型」。近年、世界の研究機関で次々と、内向型の「潜在能力」が科学的に証明されてきている。

外向型だけでは組織は成立しないことは、人類の約200万年の歴史からも裏付けられます。これほどの長い間にわたって人類が存続し、繁栄してきたのは、外向型ではなく内向型が人類を支えてきたからなのです。

当たり前ですが、人間も生き物です。弱肉強食の世界を生き残らなければなりません。ですから、私たちは時に利己的になります。学校や職場で自己主張が非常に強い人は皆さんの周りにもいるはずです。

ただ、人類の歴史は教えてくれます。利己的なふるまいをしていては生き残れなかったのです。

21世紀の今、日本はもちろん、食べるのに困らない国が大半です。ただ、人類史を俯瞰ふかんすれば、それは200万年の中でも最近100年くらいの現象です。食糧が安定的に供給されなかった時代があまりにも長く続きました。

利益を一時的にも最大化するには利己的にふるまうことが合理的ですが、それだと種は存続できません。利己的な人ばかりでは潰し合うことになります。

「調整する役割の人間」がいたから存続できた

例えば、狩りに出て、二人で協力して獲物を狩れたのに、独り占めしようとしたら争いが起きます。もしお互いが譲り合わなかったら殺し合いになりますね。ですから、私たちは旧石器時代から食糧を集団で分け合ってきました。分け合うメリットもあります。もし、自分が獲物を狩れなくても、安定的に食糧が供給されます。飢え死にしません。

つまり、はるか昔から、人の意見を聞き、思慮深く全体を考えて調整する役割の人間が存在したのです。そして、以上のようなグループを束ねる資質を考えれば、リーダーは内向型だった可能性が極めて高いはずです。少なくとも、自分の利益を最大限に追求する外向型リーダーばかりではなかったのは明らかでしょう。

内向型のリーダーの知恵のおかげで今の私たちが存在していることは間違いありません。内向型の人間がいたからこそ、私たちは存続し、進化してきたのです。

また、進化生物学者のデイヴィッド・スローン・ウィルソンは、人間を含めた生き物の大半の種において、種全体の20%は外部からの刺激に対する反応が極めて慎重であり、そうした個体が進化にとって大きな意味を持っているのではと指摘しています。