成功者に共通点はあるのか。米国で精神科医をしている大山栄作さんは「ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットは、米国では“内向型の有名人”として知られている。内向型の生き方が彼らの成功の背景にある」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、大山栄作『精神科医が教える「静かな人」のすごい力』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/Liudmila Chernetska
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ビル・ゲイツが毎年発表する「最高の本」

社交的で活発な「外向型」。一方、一人を好み、控えめで、思慮深い「内向型」。近年、世界の研究機関で次々と、内向型の「秘めたる潜在能力」が科学的に証明されており、世の中の流れも内向型に向きつつある。

マイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツはパソコンのOS「Windows」の生みの親で、世界の大富豪ランキングの常連です。もの静かな性格で読書家としても有名です。そして、自分の信念を曲げません。典型的な内向型で、アメリカでもそれが広く知られています。

彼は毎年11月の終わりごろに「今年読んだ最高の本」を紹介しています。このリストに載るとたちまちその本はベストセラーになりますが、そのリストを眺めると、彼の好奇心の旺盛さがうかがえます。

例えば2022年に発表した5冊(2022年には今年読んだ本ではなく「人生で最高の本」を5冊紹介しています)はSF小説『異星の客』や、アイルランドの人気ロックバンド「U2」のボーカル「ボノ」がキャリアを語った『ボノの回顧録』、第16代アメリカ大統領エイブラハム・リンカーンの評伝『リンカーン』、プロテニスコーチがスポーツ心理について明らかにした『インナーゲーム』、元素の周期表の謎に迫った『メンデレーエフ元素の謎を解く』の5冊です。

「これだ!」と思ったら猪突猛進に進む

彼の専門であるITどころかビジネスの本もありません。選書だけ眺めていたら、マイクロソフトの創業者が選んだ5冊とは想像できないでしょう。

ただ、こうした「ジャンルを問わずいろいろなものを吸収する探求心」や、それを「分析して自分の血や肉とする力」が彼のビジネスにおけるインスピレーションの源泉になっているのです。

もちろん、誰もが知る製品を世に送り出した彼にも失敗はあります。彼は自他ともに認める天才で、他人の意見に決して動じず、突進してきました。その姿勢がマイクロソフトを世界一のIT企業に育て上げたのです。ただ、彼自身が「時を戻せるのならば戻って姿勢を改めたい」と語っています。これも内向的らしい意見です。

彼は思慮深くありましたが、「これだ!」と思ったら猪突ちょとつ猛進な仕事の進め方をしてきました。もちろん、全体で見れば成功を収めましたが、小さなつまずきは数知れません。