※本稿は、大山栄作『精神科医が教える「静かな人」のすごい力』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
ビル・ゲイツが毎年発表する「最高の本」
マイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツはパソコンのOS「Windows」の生みの親で、世界の大富豪ランキングの常連です。もの静かな性格で読書家としても有名です。そして、自分の信念を曲げません。典型的な内向型で、アメリカでもそれが広く知られています。
彼は毎年11月の終わりごろに「今年読んだ最高の本」を紹介しています。このリストに載るとたちまちその本はベストセラーになりますが、そのリストを眺めると、彼の好奇心の旺盛さがうかがえます。
例えば2022年に発表した5冊(2022年には今年読んだ本ではなく「人生で最高の本」を5冊紹介しています)はSF小説『異星の客』や、アイルランドの人気ロックバンド「U2」のボーカル「ボノ」がキャリアを語った『ボノの回顧録』、第16代アメリカ大統領エイブラハム・リンカーンの評伝『リンカーン』、プロテニスコーチがスポーツ心理について明らかにした『インナーゲーム』、元素の周期表の謎に迫った『メンデレーエフ元素の謎を解く』の5冊です。
「これだ!」と思ったら猪突猛進に進む
彼の専門であるITどころかビジネスの本もありません。選書だけ眺めていたら、マイクロソフトの創業者が選んだ5冊とは想像できないでしょう。
ただ、こうした「ジャンルを問わずいろいろなものを吸収する探求心」や、それを「分析して自分の血や肉とする力」が彼のビジネスにおけるインスピレーションの源泉になっているのです。
もちろん、誰もが知る製品を世に送り出した彼にも失敗はあります。彼は自他ともに認める天才で、他人の意見に決して動じず、突進してきました。その姿勢がマイクロソフトを世界一のIT企業に育て上げたのです。ただ、彼自身が「時を戻せるのならば戻って姿勢を改めたい」と語っています。これも内向的らしい意見です。
彼は思慮深くありましたが、「これだ!」と思ったら猪突猛進な仕事の進め方をしてきました。もちろん、全体で見れば成功を収めましたが、小さなつまずきは数知れません。