人付き合いが上手い人は、どんな会話を心がけているか。作家の有川真由美さんは「人は『仕事内容』『結婚・子供の有無』とあれこれ詮索したがる人がいるが、立場を抜きにしてつき合いたい場合もあるもの。自分の領域にズカズカと入り込んでこようとする姿勢に心地悪さを感じてしまう。むしろ、相手の背景を知らないからこそ、心地よい関係が保たれる場合もある。『相手が話したいことを聞く』『相手が話したくないことは聞かない』は、とても大切な会話のマナーである」という――。

※本稿は、有川真由美『どこへ行っても『顔見知り』ができる人、できない人』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

「NO!」の文字を顔の前に掲げる人たち
写真=iStock.com/OrangeDukeProductions
※写真はイメージです

「でも」を封印し、“受容”の言葉から始める

「いやいや、そうじゃなくて」「でも、そんなにうまくいかないでしょ」なんて、自分の話を否定されて、話す気力が失せたという経験はありませんか?

また、こちらが意見や要望を言ったときに、「でもさぁ……」「うーん。そうはいっても」と、なんでも否定から入る人とは親しくなろうと思えなくなるものです。

「いや」「でも」「だけど」「ていうか」などの言葉は、真剣に否定しているわけではなく、単なる接続語としての口癖ですが、聞いているほうは意外に気に障るのです。

もし、「私も『でも』って言っているかも……」と身に覚えのある人は、今日から「でも」の“否定語”を封印して、代わりに「そうなんだ」「なるほどね」「それもありだね」など、“受容”の言葉を使うようにしませんか。

人それぞれ意見があるのですから、“賛成”や“肯定”ではなく、ひとまず「あなたの考えはわかった」と相手なりの考えを尊重して、受け入れるのです。

それだけで、ちゃんと寄り添っている印象になり、相手は納得するはず。

たとえば「今日のランチ、○○に行かない?」「でも、○○は遠いでしょ。今日は△△にして」なんて言っていたのを、「なるほど、それもありね。私は△△もいいかなと思ったんだけど、どう?」と言い換えるのです。

同じことを言っていても、印象はまるで違い、“対立”ではなく、同じ目的に向かう“仲間”の関係になります。

相手から「でも」で返されたとき、自分の意見を否定されたときも、自分の頭のなかでこれは「BUT(でも)」ではなく、「AND(それと)」だと変換しましょう。

「否定された」と、いちいち凹んでいては身がもちません。だれ一人、まったく同じ価値観の人はいないのですから、意見が合わないことがあるのも当然。意見を一致させることよりも、それぞれが自由に言い合えることのほうが、ずっと大事なのです。

否定されることなく、安心して話せる。「あなたもOK」「私もOK」で、自分のままでいいと思える関係は、心地よく、話していて楽しくてたまらないのです。