08年のリーマン・ショック後、大手でさえ崖っ淵に追い込まれていた頃、橋爪は苦難の経営状況をみて、「このままでは生き残れない」と大きな方針転換を決めた。地元の工業高校を卒業後、セイコーエプソンやケンウッドで培った設計・試作の技術を生かしてきた橋爪は、スワニーを「設計・試作」に特化した会社として再出発を目指す決意を固めたのだ。

これまでスワニーが世に出した製品に、ステンレスのコマにプラスチックの桜の花びらが5枚付き、回すと遠心力で花びらが開く仕組みの「花開くサクラコマ」がある。

ご当地アイテムの「花開くサクラコマ」。

このコマ、橋爪が旗振り役を務める「製造業ご当地お土産プロジェクト」の一環として製作されたものだ。観光地に並ぶ土産物の製造元表示に、中国などの名前があることを疑問に思っていた橋爪。設計・試作から金型、部品成型、組み立て、梱包までをすべて地元企業で完結させる製品を生み出そうと考え、その第1弾が花開くサクラコマだった。プロジェクトのスタート時点に当たる「設計・試作」で威力を発揮したのが、3Dプリンタであった。ここでも、3Dプリンタの特性である、試作を何度も繰り返して、完成品をつくり出すメリットが生きている。

13年2月に1個1200円で花開くサクラコマの販売を開始したところ、売れ行きは好調で、7月末現在、4400個を超えた。橋爪によれば、「5000個で金型の償却ができ、2万個で次のプロジェクトに入れる」そうで、モノづくりの仲間をつなげて、ご当地土産を発信しようという試みは、予想以上の滑り出しを見せている。

(文中敬称略)

(宇佐美雅浩、永野一晃=撮影)
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