「そよ風」がウリ4万円台の扇風機

バルミューダの寺尾玄社長。特製の「羽根」をつくるために3Dプリンタを徹底的に活用することで、起業を成功に導いた。

「自然界のそよ風を再現する」をキャッチフレーズに、3Dプリンタを駆使して今までにない“2重構造の羽根を持つ”新しい扇風機を売り出したベンチャー企業がある。高校2年生で中退し、南欧を1年間放浪した経験を持つ寺尾玄社長。寺尾社長が、03年にたった1人で立ち上げた会社が、東京・武蔵野市に本社を置く「バルミューダ」である。

そよ風を再現した扇風機とはどんなものか、1メートル以上離れた椅子に座って体感させてもらった。なるほど、一般の扇風機に比べて頬に当たる風が柔らかく感じ、羽根の回る音もほとんど聞こえない。羽根を2重構造にすると、なぜ風が柔らかくなるのか理由は不明ながらも、従来の扇風機とは“何か”が違うということだけは感じ取ることができた。

「GreenFan(グリーンファン)」と名づけられた扇風機には2種類があり、リビング用の「2+」にバッテリーが付いたコードレスタイプが4万4800円、持ち運びしやすい小型サイズ「mini」のコードレスタイプが、3万4800円。

バルミューダの製品群の一部。デザインにも力を入れている。

家電量販店の売り場を覗くと、扇風機は最も安い製品で千数百円からあり、高いものでも1万円台で手に入る。そんな相場が定着しているなか、これだけ高価なバルミューダの扇風機がなぜ売れるのか、その疑問を解消するには扇風機が発生させる「そよ風」に迫る必要がある。

従来の扇風機から送り出される空気は渦を巻いているため、風が“固く”感じられ、長時間ずっと浴びると体が疲れることがある。空気が渦を巻く現象は旋回流と呼ばれるが、この流れを根本から変えない限り、「そよ風」は実現できない。