ホルムズ海峡封鎖の影響は長期化する恐れ
アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃が始まって以来、緊迫した中東情勢が継続している。和平合意の覚書は発効する見込みだが、合意が覆る可能性も残されており、最終的な終戦まで予断を許さない状況だ。
世界の海上原油貿易の3割、LNG貿易の2割が通過するホルムズ海峡の実質的封鎖という「歴史上最大のエネルギー安全保障の脅威」は、長期化するとの見立てが一般的だ。
エネルギー自給率の向上は、化石燃料資源に乏しいわが国において常に主要命題であったが、今回のホルムズ海峡封鎖によって、その緊急性が飛躍的に高まったと言えよう。
供給側の混乱に加えて、需要側でも大きな変化が進行している。
人口減少や産業構造の変化に伴い、減少を続けてきた電力需要だが、生成AIの普及や一層のデジタル化にともない、電力消費量は近年増加に転じており、当面この傾向が続くと予測されている。
これまでは、需要が減少することを前提として、設備利用の効率化を進めることが命題となっていたが、急速に増加する需要をまかなうため、電力の供給力強化が喫緊の課題となっている。
電力供給に関して、構造転換の必要性がこれまでになく高まっていると言えるだろう。
原発1基で約2000億円超のコスト節減
こうした状況において、大規模な脱炭素電源である原子力発電の活用は避けて通ることができないことは明らかだ。
原子力が稼働した場合の効果を大まかにつかんでみよう。
100万kW級の原子力発電所1基を年間85%程度の設備利用率で運転すると、約75億kWhを発電できる。
これだけの電気を標準的な効率のLNG火力発電で得ようとすれば、年間約100万トンのLNGが必要となる。
日本が電力供給のために消費するLNG約3700万トンのうち、ホルムズ海峡の依存度が2%程度と考えると、100万kW級の原発1基が稼働すればホルムズ海峡封鎖の影響を回避できるのだ。
本年5月に営業運転を再開した柏崎刈羽原子力発電所6号機は135万kWという規模だったので、さらにインパクトは大きい。
LNGを100万トン削減することの経済効果は、LNG価格が平時(15ドル/MMBtu程度)であれば年間約1000億円、緊張局面(20~25ドル/MMBtu程度)であれば約1500億~1800億円、極端な価格高騰時(30ドル/MMBtu程度)では約2000億円超の燃料コスト節減となる。
北東アジア地域のLNG価格(JKM)は本稿執筆時点で18ドル/MMBtu強だが、2月末のイラン戦争勃発直後は25ドル程度まで上昇している。

