安全規制と事業性のバランス

ウクライナ危機時のエネルギー価格高騰をきっかけに、各国はエネルギー安全保障と経済性あるエネルギーの確保に政策の軸足を移している。

日本では、福島第一原子力発電所事故以降、「原子力発電への依存度を極力低減する」としてきたが、再生可能エネルギーと原子力はともにエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源として最大限活用するという方針にすでに転換している。

しかし、これまで政策的に手厚い支援を受けてきた再生可能エネルギーと異なり、原子力の活用にはさまざまな課題がある。必要な施策について3点に絞って整理したい。

第一に必要なことは安全規制の改革だ。

わが国の安全規制は福島第一原子力発電所事故後抜本的に改正された。一般論として、安全規制の役割は、その技術の利用にあたって満たすべき安全基準を設定し、それに合致しているかどうかを確認することであり、安全規制が適切にその役割を果たして社会の信頼を得ることは、社会がその技術利用を受容する前提条件と言える。

原子力技術の場合は特に、立地地域の住民が安全規制を信頼できなければ、稼働に対する同意が得られない。

逆に安全規制が厳しすぎて事業性が成り立たなくなったり、内容の改変が頻繁に行われるなど予見可能性が無ければ、事業者はその技術への投資判断ができず、市場に参入することができず、その技術は社会にとって存在しないものとなる。

廃炉の撤回も議論すべき

このように、安全規制の役割は非常に大きく、また、高度なバランスが求められるが、わが国の原子力安全規制は規制行政が当然持つべき効率的運用ができているとは言い難く、事業者の予見可能性が低下していることが指摘されている。

政府が「原発依存度の可能な限りの低減」を掲げて廃炉判断による会計上のインパクトを緩和する制度変更を行ったこともあり(廃炉会計)、福島事故前の廃炉判断は3基だったのに対して、事故後の廃炉判断は福島第一の6基、第二の4基を含め21基にのぼる。

これら一旦廃炉を判断した原子炉についても、このまま廃止措置をしてしまって良いのかも議論の余地があるだろう。

原子力を活用するには、規制側の審査の効率化やイノベーションを進める必要がある。

これは決して安全性をないがしろにするものではなく、むしろ規制基準を満たすことは出発点であり、そこから現場の創意工夫も取り入れた各社の自主的な安全性向上策が採られるべきであることは言うまでもない。

第二に、立地地域の同意に関わる制度改善だ。

新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所は、福島事故を起こした東京電力が運転する発電所という特殊性もあるが、規制基準への実質的合格から、知事の同意を得るまでに7年を要した。

柏崎刈羽原発6号機
写真=時事通信フォト
「原発再稼働」をやるしかない(柏崎刈羽原発6号機、2025年12月2日)

立地地域の同意は原子力発電所稼働の法的要件ではないが、実質的には要件化している。

立地地域の同意取得にかかる負担や長期の事業停止に伴うリスクは基本的に原子力事業者が負う。政府は側面支援をしているが、そもそもエネルギー政策遂行の責務は政府が負うべきものであり、この仕組みを改善する必要がある。