富士山噴火が巷の話題になって久しいが、日本列島にはさらに大きな噴火が控えている。超巨大噴火または破局噴火と呼ばれるもので、九州から北海道まで火山灰に覆われる激甚災害となる現象である。
こうした天変地異を研究する学問は地球科学だが、火山噴火から地下にあるマグマまで知り尽くした第一人者が決定版となる解説書を出した。400ページの厚さにもかかわらず記述が極めて明快で、生活に身近なメッセージが随所に添えられ最後まで読み通せる。
超巨大噴火が起きると火山の地下にあるマグマだまりが空になり、噴火口に巨大な陥没地形、すなわち「カルデラ」を作る。3万年前に南九州の姶良カルデラから噴出した火山灰は、日本列島のほぼ全域を覆い尽くした。その後「不毛の荒廃した大地に再び照葉樹林が繁茂するようになるまでには、おそらく数百年以上の長い歳月が必要」(本書45ページ)だった。
日本で過去に超巨大噴火は10回ほど起きており、平均すると1万2000年に1回襲ってきた。こうした低頻度で発生する超広域的な自然災害は、通常の対策では全く歯が立たない。たとえば14年前の東日本大震災では、1000年に1回の大規模な津波に襲われた。東北沖では100年程度の対策しかとられていなかったため大災害となった。
本書が扱う地質学的時間で言えば1000年は一瞬で、1万年に1回の巨大災害も無視して良いことにはならない。私たちは東日本大震災や能登半島地震で、「想定外」の自然災害が襲ってくる事実を思い知らされた。特に、地震や噴火が集中して起こる「変動帯」にある日本列島では、近々起きる可能性が小さかったとしても超巨大噴火の知識は必須だ。いったん起これば国家存亡の淵に立たされるからである。
そもそも破局噴火が起きれば、上空に撒き散らされた火山灰などの細粒物質が太陽光を遮り、全世界で気温低下が起きる。地球科学で「火山の冬」と呼ばれる現象だが、食糧生産の急激な減少により飢饉が蔓延する。昨今、地球温暖化に対して警鐘が鳴らされているが、歴史的に寒冷化は温暖化よりはるかに深刻な被害をもたらしてきたことも忘れてはならない。
著者は地下にあるマグマだまりの研究から、超巨大噴火がどのような現象を引き金として起こるのかを追究してきた。かなりの事実が解明されたが、まだ充分とは言えない。「恐るべき破局噴火に備えるすべは、私たちにはないのかもしれない。しかし、少なくともそれについてよく知っておく事は必要であろう」(353ページ)。
火山噴火のメカニズムだけでなく、巨大災害と環境変動など昨今話題の地球科学テーマに関心を持つ読者に広く薦めたい。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2025年8月15日号)の一部を再編集したものです。
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