ポストに安住することが許されない仕組み

年齢や経験に関係のない役割給の世界では、若くして昇格する人が発生する一方、「任にあらず」ということで降格も常に発生する。導入後3年後には毎年300人が昇格し、150人が降格するという現象も始まった。現在でも「役割給であるから上がる人もいれば下がる人もいるのは当然。若くして部長になる人もいれば、年輩者でもポジションが下がる人もいる。若い課長も誕生するなど全体的に若返っている」(原人事部長)という。

昇格・降格は当然給与にも跳ね返る。若くして優秀な社員は大きな役割と処遇を手にすることができる一方、役割を全うできなければポストを外される。あるいは「1度ラインの部長を外れても、再び返り咲く人もいる」(原人事部長)など社員はポストに安住することが許されない。役割給制度は冒頭に触れた終身雇用の弊害である安心しきってサボタージュを生むことを排除する機能も有している。

ただし、役割給制度や成果主義賃金もそうであるが、単に会社から与えられた仕事の成果のみで賃金のすべてが決まる仕組みは社員の不満を招きやすい。いかにすれば高い成果と処遇を獲得できるのか、あるいは自ら希望するキャリアにふさわしい役割を選択できるチャンスを付与することも大事だ。

同社はそれを補完するものとして2つの機能を用意している。1つがキャリアの相談窓口であるヒューマン・リレーションズセンター(HRセンター)である。仕事上の相談から現在の役割に対する不安、あるいはどんなキャリアをめざすべきかについてアドバイスする部署である。こうした相談は通常は人事部が担当するが「人事部は敷居が高いということで相談しづらい。専任部署を置くことで気軽に相談できる。実際に相談が多いし、役割給制度を運用していくうえで効果を発揮していると思う」(原人事部長)という。

もう1つの機能が社内公募である。社内イントラネット上に各部署の求人募集が随時掲載され、希望する社員はネット上で応募する。応募・選考は直属上司に内緒で行うこともでき、採用決定後に上司に通知される。この制度により年間200人程度が異動している。もちろん一般社員層だけではなく「管理職の公募もある。求人募集には、たとえば課長職の仕事内容と必要な役割レベルの要件も指定されている」(原人事部長)。