血相変えて問い詰めたらダメ
娘がキャバクラで働いていると知ったとき、親父としてはそれを言うかどうか迷うね。口に出した途端、家出されちゃったりする可能性もあるよ。
なかには血相を変えて問い詰める親父もいるかもしれないけれど、まあうまくいかないだろう。そもそも、そういう親と子は関係がよくないことが多い。そうじゃなくても、年頃の娘は親父とは口もききたくないと思っているものだ。
だいいち、キャバクラって、そんなに悪いバイト先じゃない。高校生はまずいだろうけど、18歳以上だったら法律上では問題ないし。別に、性的なサービスを提供するわけでもないし。普通の飲食店と中身はあんまり変わらない。もっと接客に力を入れて、そのぶん高い給料をもらえる。それを選ぶのは、1つの見識だよ。
ただ、学生のときに、こういうバイトであまりにも稼いでしまうと、将来まともな職業に就いたとき、給料が安くて働くのが馬鹿馬鹿しくなっちゃうかもしれない。就職するよりいいって言って、バイトから抜けられなくなっちゃったりね。そのへんはやっぱり考えたほうがいいだろうね。親父でも、母親でも、よくわかってる人がちゃんと話したほうがいい。
そんな心配を除けば、深夜のコンビニでバイトするほうがよっぽど危険だ。強盗なんかが入るし。一歩間違えれば、刺されたりしかねない。キャバクラだと、その場で暴力を振るわれる心配はないでしょう。
僕なんか、子供が深夜のコンビニでバイトすると言い出したら、差額は出してやるから昼間にしろ、と言うな。差額って、時給200円くらいのものだし。
考えてみれば、キャバクラというバイトは、いい社会勉強になるよ。そういうところで商売すると、大人の男が何を考えているのか、よくわかる。オニイサンやオジサンの本音が透けて見えるから。いくら格好いいこと話していても、ケチな奴だとか。隙あらばエッチをしようとだけ考えてる奴とか。キャバクラ嬢に評判のいいお客は、どこに行ってもそういうキャラだから、会社でも評判がいいものだし、出世もする。逆に、ただ威張っているようなお客は、周りは一応ちやほやするけど、みんな内心では嫌っているとか。人を見る目が鍛えられる。